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第47話 陽一サイド<営業の移動希望者>
調剤薬局とドラッグストアの会社にはメールと文書を送った。
「まあ、すぐには返事は来ませんよ。上層部の判断待ちでしょう」と山川弁護士が言ってた。
そうなんだろうね。
しかし、広報のメンバーには状況を伝えておいた。
小林さんはせっせと弱者達が住める不動産を探していた。
広報も弱者達の確認作業に追われている。
加護部長はクリニックの組織や規則、仕事内容の設計をしていた。
その隣で精神科の光永蓮先生が、クリニック全体でオンライン診療ができるように、HPを設計していた。
光永先生は行動が早いな。
あれからすぐ大学病院に辞表を出して、有給休暇に入った。
鬱 になったので自宅で静養すると言ったらしい。
知らんぞ。大学病院なんてすぐ近くにあるのにさ。
バレてもいい、の思い切りがカッコいい。
とりあえずバイトとして採用した。
正式に辞めるまでは本採用が出来ない。
何より彼の存在があるだけで、加護部長の目の輝きが違う。
ちょっと悔しいが、ありがたいことだ。
そこへ、上川秘書から内線が入った。
「社長がお呼びです。すぐ行けますか?」
「え? はい、大丈夫です。すぐ伺います」
何事だ?皆がちらちらと俺を見た。
「どうかしたんですか?」
加護部長から聞かれたが、
「社長に呼ばれた」と答えた瞬間、部屋の空気がスッと凍りついた。
そして社長室のドアを入ると、
人事部長と営業部長ともう一人、見慣れない男性がいた。
「お待たせしました」
「おお、来たか。実はね、そこの営業部マネージャーの白川陽翔君が、財団に行きたいそうだ」と社長。
「え?」思わずその男性の顔を見た。
彼は神妙な面持ちで俺を見つめ、静かに会釈をした。
その横に控える二人の部長は、怒りを押し殺しているのか、ひどく不機嫌な目を俺に向けていた。
「どうかね? なんか財団は今、大変らしいじゃないか。
営業から広報に移った二人が、白川君に訴えたらしいぞ。『手が足りない』ってな」と社長。
「……そうなんですか……。本当に申し訳ありません。私の不徳の致すところです。
皆様にご迷惑をおかけしたようです。お詫びの言葉もありません」
俺はそう言って、深く頭を下げた。
どっちかというと、人事と営業の部長に向けてお詫びをしているようだった。
「いや~、それはどうかな。営業のエリートマネージャーを蹴って財団に行くんだから、給料は下がるぞ。
良いのか、白川君?」
社長がからかうように、だが真剣な目で脅しをかける。
いや、それは事実だ。なんでまた……?
白川さんが口を開いた。
「はい、それは十分に考えました。営業部の皆様には多大なご迷惑をおかけしますが、それ以上に大変な場所があるようです。どうか、行かせていただけないでしょうか?
立花院長にも……お許しをいただきたいです。今はまだ何も申し上げていない状態ですが」
「そういうわけだ。院長、どうかね? 営業のマネージャー職を捨ててでも、そっちに白川君が行きたいそうだが」
「はい。給料が下がるのを覚悟して来てくださるなら、正直、喉から手が出るほど欲しい存在です。
私なりに頑張ってはいますが、いろんな面で追いついていなくて、自分でももどかしいんです。時間が三倍くらいあればいいのにと毎日思っています。
今一番欲しいのは、優秀な指導力のあるリーダーです。
ミツワの営業部マネージャーである彼なら、すべてを懸けてでもお願いしたいです」
「ふん、そうか。じゃあ、しょうがないな」
社長は視線を移し、人事部長と営業部長に告げた。
「どうかな?諦めてくれんか。白川君を財団にやりなさい。
どちらもミツワの名を背負って動く立場は同じだ。いいかね?」
社長からの実質的な通告に、二人は「承知しました」と、悔しさを押し隠すように恭しく頭を下げた。
ちらっと白川さんと目が合う。
彼は口元をグッと一文字に結んでいたが、その目は嬉しそうにほころんで細くなっていた。
俺も同じだ。なんだか胸が熱くなり、自然と顔がほころんだ。
「じゃあ、至急引き継ぎをして、来週の月曜から財団に合流すると良い。いいかね?」
「はい、かしこまりました!」
今度は全員の声が、しっかりと一つに揃った。
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