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第52話 陽一サイド<白川支配人と夕食会>

 ミツワを退社して、白川支配人を連れて生家に到着した。 生家の駐車場に到着すると、支配人は珍しそうに工事中のビルなど、家の周りを興味深げに見渡している。 「全部をご案内しましょうか?」 「あ、いえいえ、それはまた今度、時間がある時にお願いします」 早速家の中に入ると、リビングには全員がずらりと並んで待っていた。 「ではご紹介しますね。こちらがミツワの営業部マネージャーから、財団に移動してくれた白川支配人です」 「白川陽翔です。初めまして、どうぞよろしくお願いします」 そう言って深々と頭を下げた彼に、皆も一斉にペコリと頭を下げた。 そして、我が家のメンバー全員を紹介する。 預かっている子供たちのことなどは事前に伝えてあったが、それでも皆、一様に緊張の面持ちだ。 「さあさ、お夕食の準備が整っております。どうぞお席にお付きください」 由紀さんの明るい声に促され、テーブルへと移動する。 食卓に並んだ料理は、心づくしの美しい前菜の盛り合わせから始まった。 ――おっ、今日は一段と力が入ってるぞ。 「わあ、きれいだなあ……」 支配人は彩り豊かな料理に見惚れていた。 「ここのお料理、いつも本当に美味しいんですよ」 加護部長も満足そうに微笑む。 今日は家政婦さん達も同じテーブルに席についてもらった。 「皆さんのお話は、大体院長から伺っています。こうして揃っていただけて、本当に心強いですねえ」 彼がそう言って穏やかに笑うと、ふっと小林さんが声を漏らした。 「いえいえ、支配人こそ凄い武勇伝をお持ちだと伺っていますよ」 そう称える小林さんに、 白川さんは「え? なんのことでしょうか?」と目を丸くして戸惑っている。 それを暴露するのは俺もちょっと恥ずかしいんだけれど、ここまで言われたらしょうがない。 「実は、支配人と最初に引き継ぎをした時の話を、みんなにしたんですよ」 俺は苦笑いを浮かべながら話し始めた。 「あれは金曜日の夕方から夜にかけて一気に説明して、それを録音しながらメモを取られてたでしょう? あとは財団の資料をコピーして渡しただけなんです。 それなのに日曜日には、まるで最初からずっと財団にいらっしゃったかのように、全部完璧に把握されていて……。 あれが凄すぎて、みんなの中で『ミツワの営業マネージャーって、こんなも頭脳明晰なのか』って武勇伝になったんですよ。心底参りましたよ。本当に感服しました」 そこまで正直に告白すると、なぜか白川さんは気まずそうに、ひきつったような当惑した表情を見せた。 「あ、え~っと、それはねえ……実は、かなり大きな誤解があるんですよ」 「え? どういうことですか?」 リビングにいる皆の視線が、一斉に彼に集中した。 「話すと長くなるのですが……、最初に財団を立ち上げると聞いた時、すごくうらやましかったんです。 素晴らしい試みだと思って、できればその時に自分もお手伝いしたいくらいでした。 しかし、毎日の営業の仕事に追われているし、恐らく財団に異動すれば給料も下がるだろうし……。 残念ながら、遠巻きに見ているしかなかったんです。 でも、そのうちに営業から八坂君と山辺さんが異動したでしょう? その後どうなっているのか心配で、時々財団の話を耳に入れていました。 そしたら、とんでもなくやることが広がっているじゃないですか。どう考えても、今の院長は10人分くらいの仕事をひとりで背負われていると思ったんです」 その言葉に、リビングのあちこちからクスクスと笑い声が漏れた。 まったく、自分の実力も考えずに無茶ばかりしている自覚はあるので、本人を目の前にして褒められると一番恥ずかしい。 しかし、白川さんの話はまだ続くのだった。

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