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第54話 陽一サイド<ご褒美イタリア>

 夕食会が終わってから約1か月経った。 その間の財団の変化が凄い。 まず支配人は、調剤薬局&ドラッグストアの会社をD社に決めた。 向こうはお抱えの建設会社があり、建物のパターンもいくつかあって、建てるのが簡単らしい。 簡単な地質調査を終えると、すぐ基礎工事に入った。 完成までたった2カ月半だ。 建物は未来ビル完成の2か月前に引き渡す。 それまではこっちの自由だ。 完成しても、8か月以上は他のことに転用すると支配人が言った時の、 向こうの「え??」という驚愕の表情は写真に撮りたかったさ。 建物を作るだけ作ってもらい、店作りは8か月以上も待たせるんだ。 これは代金をすべてうちが払うからこそ出来ること。 向こうはノーとは言えない。 以前に社長の計らいで、財団にいくつか提供をしてくれることになっているリストを、支配人に渡すとニヤリとしていた。 このリストには、俺が希望したシャトルバスや社用車、会議机やベンチが入っている。 「では、早速お願いしましょうか。まずシャトルバスが早く欲しいです。もう天使たちがあちこちに散らばっているので不便だと思いますよ」 彼の表情が柔らかく微笑んだ。 それで彼は、シャトルバスをラッピング付きで注文した。 もちろん社用車も同時に発注だ。 納車まではレンタカーのバスを確保して、車体には剥がせるタイプのシートで財団の名前を入れた。 そして財団に借りたシャトルバスが来たのは、たった3日後だった。 ドライバーも同時に採用したから、運転して生家にやって来たよ。 俺はまるでマジックを見るようで、唖然とした。 お陰であちこちの住まいに分散していた天使達を、生家やミツワタワーに送り届けることが出来るし、お弁当も持たせることも簡単だ。 生家のキッチンやリビングでは、出来る範囲で料理の勉強をしながら皆のお弁当を作っていた。 家政婦さん達は生活トレーナーとして大活躍だな。 支配人はショップ準備に使うコンビ台車や、キャスターの付いたパイプ棚、会議用机などをすぐに発注した。 これもミツワの協賛品だ。 さて、広報の小松さんと岡本さんは即日、イタリア小物のショップの準備に入った。 彼女たちが抜けた分は、さっさとバイトを4人入れて、天使たちの問い合わせを受けている。 早いよねえ~、やることが……。即断即決だ。 躊躇する事がないんだもん。 俺は本当に落ち込むよ。 ところで、広報の二人にはご褒美があるそうだ。 日本で出来る準備が整ったら、イタリアに行かせることになった。 支配人曰く「いきなり行くと目移りして、何も決められなくて混乱するだけ」 ふ~ん。言えてる!(笑) 主に日本で袋物などを製作してもらう布地を買い付ける。 そしてあらかじめ縫製してくれる工房を探す。 見本の袋物はイタリアで買い付けて来る。 小物類はカタログを作成する。 店主と輸入のロットなどを決める。 他にタイルや、絵皿、鉢植え、花台、ランプ、椅子、キャビネット、皮製品、布製品などを買い付け予定。 ほとんどをあらかじめ決めておく。 いや~助かった! こんな大変なことを俺がやらなくて……。 多分、前準備だけで完全にお手上げだった。 ついでに”ナポリピザを食べて来い”と社命だそうだ。いいねえ~。 カフェでナポリピザをやるからね。 本場で味わって来いと言うわけだね。 だから新婚旅行に頼んだアテンドを付けてあげた。期間は約2週間だ。 新婚旅行だったらよかったのにね。 この話を颯太にすると指を食わえて、 「俺もまた行きたいなあ~」と上目遣いで見つめられた。 「よしよし、わかった。財団のシステムが全部出来たら行こうか?」 「うん、絶対行く!」すごく颯太が喜んだ。 新婚旅行のイタリアは最高に良かったもんね。 しかし、休めないと困る。 今のうちに予約のつもりで言っておこう。 ミツワに行くと、支配人に小さな声で、 「颯太がイタリアに行きたがっているので、落ち着いたら10日程休ませてもらえますか?」とお願いをした。 すると、ぱっと支配人が明るい表情をした。 「それならすみませんが、ついでに広報の子達も一緒に連れて行っていただけませんか? あの子たちのホテルは安い所で結構ですから」と支配人。 広報の二人だけでは不安だったのだろう。 しかし、どうしよう。困った。 こっちは飛行機の席やホテル、食事も多分違うと思うんだけど……。 帰宅して颯太にそのことを話した。 「ええ?ヤダよ~、先生と二人きりが良いの!」 ちょっとイヤイヤをして、ぎゅっと腰に手を回して抱きついて来た。 ……もう選択の余地はないな。 なんと言うか__うれしいような、可愛いような、照れちゃうね。

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