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第55話 陽一サイド<助っ人登場>
広報と一緒には行けないと、正直に支配人に言った。
「颯太は向こうでもSPやアテンドがいるし、飛行機もファーストクラスだし、ホテルは五つ星なので、広報が安いホテルだと場所的に離れている気がします。
それに仕事が第一のスケジュールだと、行動を共にすることが難しいかもです」
「……そうなんですか……」
答えが予想外だったのか、ちょっと困惑していた。
そして「ご無理を言ってすみませんでした」と申し訳なさそうにお詫びをされた。
こっちもなんだか申し訳ない。
「でも空港に着いた時点でアテンドが迎えに行くようにするし、車やホテルの手配はしますから、早めにコースやスケジュールを教えてください。
それにスリなどが多くて危ないですから、品選びに集中できるようにSPを2名付けて、立花家が利用している現地のエージェント会社に頼みますから」と最大限のことを伝えた。
そうだ! 援軍を呼ぼう。
「それとですね、妹の夫の三上友則(とものり)さんが銀座の老舗のバッグ店の跡継ぎなんですよ。
イタリアで皮革(ひかく)製品の修業を数年していたんです。
一緒に行けるかどうか、声を掛けてみましょうか?きっと商売にも詳しいと思うんですよ」
「え、そうなんですか? でも、ご迷惑ではないですか?」
「まあ、聞いてみますよ。ちょっと待っててください」
それで席を外して電話した。
友則さんはすぐに応答してくれた。
事情を話すと、ちょうど横にいた社長に相談したらしく、
その後は「喜んで行きますよ」と笑いながら快諾してくれた。
「では支配人を紹介するので、ミツワ財団の会議室に来てもらえますか?」
「はい、今日は急ぎの仕事はないのですぐ伺います」
この前来てもらった時に広報の二人とはすでに会っている。
40分ほどして会議室に来てくれた。
やはりスーツをびしっとキメている。
三上家御用達のオーダースーツだなと思った。
見ただけで生地の上質さが違う。
さっそく白川支配人を紹介した。
「わざわざお越しいただいてすみません。
イタリアまでご同行をお願いしてもいいんですか? 2週間の予定なんですが」と恐縮していた。
「はい、いいですよ。イタリアでは皮革製品も仕入れると聞いています。
通訳もしますし、買い付けのお手伝いもしますよ」
穏やかに、そして静かに微笑んで答えていた。余裕だ!
「ああ、そうですか。助かります。良かったあ〜! 広報の女性二人だけではちょっと心もとなかったんですよ。
足元を見られるんじゃないかと思ったんです」と白川支配人。
「ああ、それね、絶対ありますよ。断言します。
日本の若い女性二人だけで初めてのイタリア買い付けだと、結構ぼったくられます。
でも、これはしょうがないんですけどね」
胸を張って友則さんが言うので、支配人が苦笑していた。
「やっぱりですか?」とへへへと笑っていた。
小松さんたちも笑顔を見せつつも、気まずそうに肩をすくめていた。
「支配人、医者の俺が行くよりも、本職の友則さんが行く方がはるかに安心ですよ」
「ああ〜そうかもしれないです。銀座でバッグ店をなさっているんですね?」
支配人の表情がほどけて、恐縮していた。
「はい、一般のバッグ類や靴と小物、イタリアの輸入品も扱っています。
僕は皮革製品のオーダーメイドやリペアを、店の奥の工房でやっています」
端正な容姿でスマートに答える友則さん。
広報の二人もいつになく、頼もしそうな彼に熱い視線を送っていた。
「わあ、では皮革製品については安心です! どうぞよろしくお願いします。
旅費や宿泊費はもちろんのこと、アテンドのお礼もさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします。
それと広報も交えて、早速打ち合わせをお願いできますか?」
「あ、では会長室を使いますか? いいですよ。ここは電話が賑やかなので」と俺。
場所を提供してゆっくりと成り行きを見ようじゃないか。
「はい、ありがとうございます。ではお言葉に甘えます。
小松さんと岡本さん、パソコンを持って行きましょう」
俺も一緒に会長室に行った。
会議用の机で皆がパソコンを広げると、二人はしっかりとやるべき項目をまとめていた。
「ではちょっと見せてもらえますか?」
友則さんが彼女たちのファイルを自分のパソコンで共有して、それを読んでいた。
ざっと5分ほど読むと、
「ええとね、ローマからナポリ方面へ行く順番ごとに、コースを作ってみますね。
これによって、先に決めていく小物の順番が決まりますからね」
ささっとエクセルで順番を変えていった。
支配人も彼のすることを、じっとパソコンの画面で見つめていた。
「ローマからナポリ方面に行き、ここでナポリピザを食べます。
それからさらに南へ下り、アマルフィのポジターノというところに行きます。
ここは可愛いカラフルな小物がいっぱいあるんですよ」と友則さん。
「へえ〜」と皆の声が揃った。
「ヴェネツィアも行きますよね?」
「はい、行きます! ベネチアングラスも買いたいです」と小松さん。
「そしたら、一旦ローマへ戻り、ペルージャへ向かい、さらにデルータへ行きます。
ここがマヨルカ焼きの聖地なので、焼き物を買い付けます。陶器タイルもあります。
それから海方向へ行き、ヴェネツィアに宿泊。
ここからムラーノ島に行って、そこでガラスを買い付けます。
その後はフィレンツェに向かい、サン・ロレンツォ市場周辺や革製品工房などで、皮革製品を買い付けます。
そこから近郊にプラートという生地の産地があるので、そこで生地を買い付けます。
そして最後はローマに戻ります。こういうコースでどうでしょうか?
2週間もあればじっくりと選べますよ」
皆でわーっと歓声を上げて大拍手をした。
「すごいなあ〜、さすがですよ。いらしていただいて本当に助かりました。ありがとうございます」
白川支配人が手放しで喜んでいた。
そこで俺が追加の一言を放った。
「あのう、補足ですが、友則さん一人でもホテルの部屋は多分ダブルやクイーンズサイズベッドなんですよ。向こうはシングルだけって滅多にないんです。
だから部屋をツインベッドにして、支配人も最初くらいは一緒に行くべきじゃないですか? 最後の責任は支配人が取らないと。うちは予算の上限がないんですから、一緒に行って下さいよ。
俺と加護部長とで留守番してますから、かまいませんよ」
「え、え、え? いいんですかー?」
もうガッツポーズで喜んでいた。
みんなも拍手喝采だったよ。
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