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第61話 陽一サイド<買い付け品>

 ドラッグストアと調剤薬局の建物はすでに完成している。 そして、中には買い付け品を収納するためのパイプ棚や、コンビ台車、机や椅子などの什器や備品も無事に揃った。 イタリア組が出発してから約1週間が経った頃、最初の航空便が届いたと生家から連絡が入った。 早速、俺は加護さんと二人で生家に向かった。 「あれ、こんなにいっぱい送ったんですねえ。大丈夫なのかなあ」 山積みの段ボールを眺めながら、加護さんが呆れたような声を漏らす。 「しょうがないね。メールにはリストがあるから、番号順に並べておいて欲しいそうだよ」 「え、これって中を開けて棚に乗せて置くってことですかねえ?」 「うん、おまけに検品をして欲しいそうだよ。割れてたら写真を撮って、チェックしておかないといけないらしい」 「えー、めっちゃ手間じゃないですか? これは天使たちを呼びましょうか?」 「うん、そうしよう。俺達だけでやってたら、夜になっても終わらないよ」 その言葉の直後、ふと良いアイディアが脳裏をかすめた。 「待って、生家の家政婦さん達を呼ぼうか? 貴重品の扱いには慣れてるだろ」 「ナイスアイデア! 賛成」 加護さんが勢いよくガッツポーズをする。 土壇場での俺のひらめきも、まだまだ捨てたもんじゃないなと密かに胸を張る。 さっそく連絡を入れると、 「何ですか?買い付け品ですか? 喜んで~!」 なんと家政婦の面々が4人揃って駆けつけてくれた。 留守番は小林さんだけだそうだ(笑) 慌てて来た彼女たちに状況を説明し、リストを手渡す。 そこからの仕事の早いことといったらなかった。 遅れてやってきた横森さんまで、 「私は段ボールなどを片付けますから」とテキパキ動き出す。 その揺るぎない忠誠心には頭が下がる思いだ。 あらかじめ用意しておいた事務用品を使い、由紀さんが棚ごとにテキパキとメモを貼っていく。 届いた荷物は次々と開封され、リストに沿って綺麗に分類されていった。 「これね、今日の分が終わったら写真に撮って、支配人に送った方がいいな」 「はい、承知しました」 「じゃあ、すみませんけど、ここはお任せして、俺たちはミツワに戻ってもいいですか?」 「はい、どうぞ。お任せください!」 頼もしい返事と明るい声が、新しい建物のなかに軽やかに響き渡った。 ふ、楽しそうだな。 そして俺達は調子よくミツワに戻ってきた。 「加護さん、ちょっとお茶しようか?」 「はい、そうしましょう。ソフトクリームを食べたくないですか?」 そういえば、ミツワの社員食堂にも、菜の花フーズのソフトクリームの機械を入れたんだった。 これは社員にアンケートを取ったら、圧倒的な賛成多数で機械を入れることになった。 甘くて冷たいミルクの味わいに舌鼓を打ちながら、二人でまったりとティータイムを楽しむ。 ひと息ついていると、颯太からメールが届いた。 ——会長室にもうすぐ着くから来てほしい、だって? 慌てて会長室へと向かったが、部屋に颯太の姿はない。 あれ、もしかして奥の個室かな? と覗いてみると、いたいた。 すでに素早く寝間着に着替えて、ふかふかのベッドに横たわっている。 早いなあ~。 「どうした、 そんなに疲れたの?」 「うん……もう寝るね。お休み」 って、それだけの為に俺を呼びつけたのか? 「おい、今日のレッスンはどうだったんだよ」 「声をいっぱい出したから疲れた……起きたら吸入しないと無理」 それだけ言い残すと、颯太はすうすうと規則正しい寝息を立てて、あっという間に眠りに落ちてしまった。 よく考えれば、午前中はハードなダンスレッスンを受けて昼食を挟み、午後は厳しいトレーナーのもとで歌のレッスンだ。 そりゃあ、これだけ体力を使い果たして当然か。 しょうがない。ここは放っておくことにして、俺は静かに会長室をあとにして会議室へと戻った。 その後も、イタリアへ旅立った支配人からは毎日詳細な報告が上がってくる。 どこに泊まって、どんな食事をして、何を買い付けたかまで……まあ、相変わらずマメというか細かいねえ。 届いた第一便の航空便は、先ほどのポジターノからの荷物だった。 出発からまだ1週間経っていないのに、それにしては驚くほど早い。 やはり、あそこのホテル近辺に並ぶ可愛い小物を売る店に、みんなすっかり夢中になってしまったらしい。 『レモン飴は見本だけ買って、日本で作れるところを探します!』 どうやら、もっとパッケージに凝って、日本の有機レモンを使ってさらに美味しいものを作りたいんだとか。 ふーん、こだわりがすごいねえ。 そして、俺と颯太がすっかり虜になった、あの絶品ペストリーやケーキを売っている店についても言及があった。 現地組もやっぱり色々買い込んだらしく、今日の夕飯はペストリーとお茶漬けの組み合わせだったそうだ。 それはそれで最高の贅沢だな。 外国のケーキ屋さんって、見ているだけで新鮮でワクワクする。 並んでいるもの全部試したくなっちゃう気持ちはよく分かる。 ただ一つだけ……日本人にはちょっと甘すぎるんだよね。 きっと、みんな持て余してるんじゃないかな。 イタリアの空の下を思い浮かべて、思わずクスリと笑った。

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