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第63話 加護サイド<コンテナって?>
院長から「船便でコンテナごと届く」と聞かされていた。
あれ? 20フィートってどれくらいの大きさだっけ?
気になってネットで調べてみると、長さが6メートル、幅が2.4メートル、そして積載重量は最大で20トンまで入るという。
……20トンって、なにそれ?
そんな巨大なものを一体どこに置くんだよ。
とはいえ、院長が「未来さんに間に合わせの倉庫を頼んでおいた」と言うので、とりあえずは様子を見ることにした。
だが、そんなのとても待っていられない!
居ても立ってもいられず、私はたまらず白川支配人のもとへと詰め寄った。
「あの、買い付けた商品って、いったいどれくらいの期間で売り切るつもりなんですか?」
問い詰める私に、支配人は顔をしかめ、気まずそうな笑みを浮かべる。
「まあ、大体展示用のディスプレイ分と、販売分を合わせて1年分なんですよ。最初ですし、ちょっと気合を入れすぎちゃいましたかね?」
は? 知らん。
想像しただけでグラリと目が回る。
この圧倒的な物量を、一体どうするつもりなんだろう。
それから1週間後。
ドラッグストアの奥の駐車場に、いつの間にか簡単な基礎が打たれ、みるみるうちに中古のデカいプレハブ倉庫が組み立てられていった。
デカい! 横幅は8メートルほどもあり、奥行きも4メートルはある立派な横長サイズだ。
しっかりエアコンまで取り付けられている。
その様子を眺めながら、院長がふうと小さく息をついた。
「何とか間に合いましたね」
そう言って、院長は穏やかに微笑んだ。
隣で一緒に眺めていた支配人も、心底ホッとしたように同調する。
「いや〜、冷や汗をかきましたよ。これで何とか収まりますかね?」
彼が安心したように頬を緩めた、その瞬間だった。
院長がさらりととんでもない爆弾を投下する。
「いや、それは知らないよ。入り切らなきゃ、あとは自分でミツワに頼んでね」
「あっ、あ、はい……」
なぜか支配人はちらりと私に視線を送り、バツの悪そうな苦笑いを浮かべた。
へっ? 私は一切関係ありませんからね。
思わず目で強く抗議の返事をしておく。
それからさらに1週間が経った頃。
「コンテナを2日後に届けるけど、置き場所の準備は大丈夫か?」
そんな確認の電話が、ついに事務所へ入った。
連絡を受けた支配人は、すぐさま全員をフロアに集める。
「さあ、いよいよ決戦の時です! 皆さん、総出で手伝ってください。
電話番はアルバイト2名と広報1名、それと光永先生に残っていただいて、それ以外のメンバーは全員荷物の移動をお願いします。もちろん、天使たちにも集合してもらいます!」
その指示を聞きながら、光永先生がちょっと同情を含んだ、含み笑いのような視線を私に向けてきた。
私は引きつった笑顔を何とか作り、心の中で気合を入れる。
(はいはい、肉体労働ね。お任せください……っと。
でも、私の大切な腰だけは絶対に死守しなきゃいけないんだから!)
そして二日後、巨大なコンテナが敷地に到着した。
まさに「3トントラックの荷台だけをぽんと地上に降ろした」かのような圧倒的な存在感だ。
あらかじめプレハブの中には、キャスター付きのパイプ棚や作業台をいくつか作り付けてもらってある。
受け入れ態勢は万全だ。
到着するやいなや、支配人が皆をテキパキと集めて指示を飛ばす。
「展示に使うキャビネットやコンソール、ベンチといったイタリア家具があります。それらは真っ先に店舗へ配置するので、なるべく入り口の右側にまとめて置いてください。
生地類はあとで縫製会社に回すので、軽トラックへ。
それからベネチアンガラスは非常に高価なので、破損しないよう大切に家具の隣に配置します」
指示を受けて、広報の2人が手元のリストを確認しながらテキパキと置き場を誘導していく。
小物の段ボールは、中身がひと目で分かるようエアパッキンを巻いたまま棚へと収められていった。
やがて荷解きが進むにつれ、あれほど恐れていた物量がみるみる小さくなっていく。
――って、梱包を解いてみたら、案外かさが半分になったぞ?
思わず拍子抜けして笑ってしまった。
なんだ、見た目ほど大げさな量じゃなかったんだな。
隙間を埋めるための緩衝材やパッキンの量が、想像以上にすごかっただけのようだ。
そうして、みんなで力を合わせたおかげで、夕方前にはすべての荷物をプレハブ倉庫へ移し切ることができた。
新設のエアコンを全開で稼働させ、室内の温度と湿度をしっかり管理した状態で、ピタリと鍵を締める。
一段落したところで、支配人が再び皆をその場に集めた。
「はい、皆さん本当にお疲れさまでした! これにて本日の大仕事は終了です。
それでは、母屋(生家)の方でお茶を用意してくださっているそうなので、みんなで行きましょう!」
生家へ移動すると、家政婦さんたちが色とりどりの美味しそうなケーキをきれいに切り分け、素敵なブッフェスタイルで迎えてくれた。
――気が利く~! こういうの、本当に好き。
ドリンクも各自の好みに合わせて自由に選べるようになっている。
「わあ、なんだかおしゃれなカフェみたいじゃない?」
誰かがそう声を弾ませた。
肉体労働で全身を酷使していたみんなにとって、この心遣いは何よりの救いだったらしく、あちこちからホッと緩んだ歓声が上がった。
そんな賑わいの中、ふと隣に気配を感じると、院長がそっと声を掛けてくれた。
「腰とか、大丈夫だった?」
こういうさりげない気配りができるところが、本当に好きなのよねえ。
「お陰様で、自分の腰と相談しながら大事に作業してました」
私も小さな声でそう答えると、院長はくすっと優しく笑った。
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