68 / 103
第68話 碧人サイド<父に告白>
院長先生が凄い良い提案をしてくれたから、すぐ父に電話した。
「もしもし父さん、元気にしてる?」
「ああ、元気だよ。どうかしたのか?」
「あのさあ、大事な話がいっぱいあるんだよ」
「ふ~ん、そうなんだ。いいよ、なんだ?」
さすがに言いにくい……。
「あのさあ、最初に家を離れる時に大学の教授って言ってた人なんだけど、あれウソなんだよね」
「ふ~ん、それで?」
あれ?なんで怒らないの……。
「父さん、怒らないの?」
「ふん、怒ってどうする。大体見当はついてるさ」
「え、なんで?」
「陽菜ちゃんだろう?向こうの親が血相を変えて怒鳴り込みに来たよ」
驚愕した!!
「えー!そうだったの?で、何て言ったの?」
「知らないって言っといたよ。大学の教授のお手伝いで下宿しに行ってますってね。
教授が挨拶に来られましたと言ったよ」
「そうなんだ。ごめんね、ウソ言って。それで本当は大学の教授じゃなくて、病院の院長先生なんだ。今はミツワの財団の院長をしてるんだけどさ」
「はあん、なるほどね。それも知ってるさ」
「は?なんで知ってるの?」
一体どうなってるんだ?
「俺は警備の仕事をしてるんだよ。警察官並みに鼻が利く。お前を信じてるけど住所を聞いていたから、休みの日に家のそばまで確かめに行ったよ。偉くデカい家だったねえ~、まるで御殿か?SPまでいるからさ。驚いてひっくり返りそうだったよ」
ふふ、ちょっと笑った。
「じゃあ、場所も知ってるんだね?」
「うん、あそこなら何も心配しなくていいみたいだからさ。陽菜ちゃんも安全だと思ったよ」
「そうなんだよ。陽菜は父親から暴力を受けて、死にそうなほどの怪我で重症だったんだ。それで、ミツワの颯太さんにメールを送ってヘルプしたんだ。
そしたら、颯太さんの旦那さんである院長先生が、ずっと病院に入院させてくれてさ、退院まで4か月以上もかかったんだよ。福祉にも相談してくれて、今は通信制の高校にも行ってるし、あの屋敷で俺も一緒に匿ってくれてるんだよ」
「へえ~、それは良かったじゃないか?なんか陽菜ちゃんの高校まで怒鳴り込みに行ったらしいよ。でも行き先が分からないから、諦めたらしいけどな」
「えー!ぞっとするよ。で、俺さ、前に就職が決まったって言っただろう?」
「ああ、ミツワだろう?HPで調べたよ。それですべてわかった。あの人は医療顧問って写真が出てたよ」
「‥‥‥父さん、鋭いね?」
へへへ…と父が笑った。
「今頃分かったか?」恐れ入った。
「それでね、今度財団の社員寮ができたんだ。俺、陽菜と結婚して二人でそこに住みたいんだよ。良いかな?今度連れて行くけどさ」
「あ、いや、連れて来なくていい。俺がそっちに行くよ。こっちに来て向こうの親に出くわしたら大変だからな」
「あ、そうだった!危ない危ない。 それとね、院長先生がウソを言ったからお詫びに行きたいって言ってるんだけど、どうしようか?」
「いや、いいさ。理由は分かってるからさ。わざわざこっちに来なくていいよ」
有難い!! さすがに父さんだよ。
「そう? それとね。院長先生が、もしよかったら財団の警備の仕事をしませんか?って言ってくれているんだけど、どうかな?
今三交代でしょう? 財団はもっと楽だし、通勤も大変なら社員寮に住んでもいいって言ってくれてるよ。
寮費も月に1万なんだよ。俺も陽菜と一緒に住むしさ。
院長先生が、父さんにずっと会ってないでしょう?って心配してくれたんだよ」
「‥‥‥そうか、申し訳ないなあ。じゃあ、そっちに行こうか? こっちに一人でいてもつまらんしなあ」
「うん、そうしてよ。俺も財団の仕事をするからさ。毎日会えるしご飯も一緒に食べれるよ。おまけに寮には大浴場があるんだよ」
「へえ~最高だね。良し、履歴書を書いて行くよ。この家は人に貸そうか? 家賃が入れば老後の蓄えにもなるしな」
「うん、そうしてよ。じゃあ、来週の土曜の午後に来れる?」
「ああ、行けるよ。スーツを着て行かないとまずいなあ」
ふっと笑った。
「じゃあ、院長先生に伝えておくね」
「うん、わかった。助かるねえ。本当にありがたいよ。親子で採用してくれるなんてなあ。おまけにミツワなんて一流企業じゃないか。今よりずっとすごいよ」
「じゃあ、陽菜と結婚するからね。待ってるよ」
「ああ、またな」
ああ~しみじみと喜びがこみ上げて来た。
父を一人で残していることが、いつも心のどこかに引っかかっていたんだ。
これで心おきなくやっていけるな。
ともだちにシェアしよう!

