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第66話 陽一サイド<社員寮完成>
皆がそれぞれに準備に追われる中、ついに待望の社員寮が完成した。
みんなで集まってささやかな落成式を行い、その後は揃って館内を見学して回る。
室内には造り付けの収納以外の家具はまだ入っていないが、どこもかしこもピッカピカに輝いていた。
新居の出来栄えを満足そうに眺めている未来さんに、私は声をかける。
「未来さん、本当にすごいじゃないですか。このラウンジなんてめちゃくちゃ素敵ですよ」
私が褒めると、彼はふふんと胸を張った。
「でしょう? このデザインは我ながら中々の傑作になりましたよ」
その言葉通り、ゆったりとした広さのラウンジはシンプルでモダンな仕上がりだ。
何よりも、空間を演出する照明にすごく凝ったのだという。
もっとも、その真価は夜にならないとピンと来ないけれど、たっぷりと光が差し込む明るさが最高だった。
今後2週間以内に、カーテンやベッド、家電などの生活必需品がすべて揃う予定だ。
「ようやく完成しましたねえ」
小林さんが心の底から嬉しそうに目を細める。
「ええ、本当に長かった……」
俺も深く頷きながら、こみ上げる感慨に浸った。
建物の周りをうろちょろしている天使たちも、完成を大喜びしている。
彼女たちの目当ては、なんといっても社員寮にある自慢の大浴場だ。
「わぁ、すごーい!」と、みんなガラス越しに中を覗き込んで、「入りた〜い!」と歓声を上げている。
「入りたきゃ入っていいよ」
小林さんが太っ腹な許可を出した。
「どうせ光熱費なんて大して変わりませんよ」だって。
いいねえ、すっかり大旦那の風格じゃないか。
そして、翌日からの家具やカーテンの搬入や設置には、俺も加護さんもつきっきりで立ち会うことになった。
「院長、そろそろ本格的に部屋割りを決めましょうよ。
私と光永先生も早くここに引っ越さないと、ホテルの営業がスタートできないですからね」
「そうだね。でも、ちょっと気になっていることがあるんだよ。
家賃も光熱費もすべて無料って、さすがに財団側の負担が大きすぎないかな?」
私の言葉に、加護さんは「やっぱり?」と楽しそうにふっと笑った。
――なんだよ、最初から分かってたんじゃないか。
「分かりましたよ。じゃあ、オール込みで月額1万円でどうですか?」と加護さん。
彼女はちょっぴり諦めたような、でもどこかすっきりした表情で提案してくれた。
まあ、福利厚生としてもそのくらいが妥当なところだろう。
「そうだね。それなら光熱費の足しにもなるし、それでいこう」
こうして、社員寮の利用料は「月額1万円」にめでたく決定した。
「ただ、希望者が多すぎるから、ちゃんと優先順位のルールを作らないと後で大変なことになりますよ」
加護さんが真剣な顔で釘を刺す。
まったく、彼女の言う通りだ。
「実は、私の方でちょっと仮のリストを作ってみたんです」
そう言って、彼女が現時点での入寮予定者一覧リストを見せてくれた。
医療関係者の一部に加えて、変則的なシフトで働くスタッフがかなり多く名を連ねている。
「うわ……これだけでもう24名もあるのか。こりゃあ、かなりの激戦だな」
部屋は全部で35室だ。他に玄関横に寮母の部屋がある。
名前の詰まったリストを見ただけで、俺は思わず大きなため息をついてしまった。
「そうですよ。これから先、事情を抱えたシングルマザーの方々が増える可能性だって、十分にありますから枠の管理は油断できませんよ」
「わかった……。頭が痛いところだけど、続きはまた明日。今日はもう終わりにしようか?」
二人で散らかったフロアの後片付けをし、しっかりと入り口を施錠してからそれぞれの家路についた。
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