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第70話 陽一サイド<足りないもの>

イタリアの小物を出すショップは、展示が終わってみるとぎゅう詰めで、予定していたイタリア菓子などを置くスペースは外にはみ出ていた。 まあ、屋根が突き出しているので濡れはしないが、開店時や閉店時には店先のワゴンなどを店内の通路に引っ込めるつもりらしい。 それを俺がじっと見ていたので、支配人が声を掛けてきた。 何だか気まずそうに俺の視線を受けて、苦笑いをしている。 「やっぱり見苦しいですよね?いっぱい出したのでね……」 気の毒に、申し訳なさそうにしていた。 「いえいえ、気持ちは分かりますよ。今商品がいっぱいなので、あれもこれも売りたいんですよね?」 「そうなんですよ。でも見せないと売れないですよね?」 分かっちゃいるけどってやつか。 まあ、焦るのは分かるけどね。 「最初に来た人に全部を見せる必要はないと思いますけどね。花のシーズンだと、1度見に来た人は、きっと翌月も来てくれると思うんですよ。 だから少しずつ品を足していってもいいと思いますよ。 ……それにしても品が溢れますね。今のままではイタリア菓子までは置けないですね?」 支配人が顔を擦りつつ困っていた。 加護部長もそばで面白そうに成り行きを見守っている。 「はい、そうなんですよね。このスペースでは菓子まで収めるのが無理みたいなんですよ」 もう支配人は菓子部門を諦めているようだった。 「そしたら店外に店を作りますか? 生家のSP小屋のように、このショップの目の前に可愛い小屋を作って、菓子部門だけそこに移しますか?」 「え、ええー?いいんですかあ~? ぜひそうしていただけると大助かりますよ。ぜひお願いします!」 最敬礼をされた! そばにいた小松さんや岡本さんも拍手喝采だった。 加護さんもそばでムフフと笑っていた。 「そしたら、未来さんに頼んできますよ。 あとね、オープン記念ということでイベントをやりませんか?」 「は?イベントですか?」 「はい、最初はテントを張ればどうかと思ってたんだけど、小屋を出すなら体裁が整うから、菓子小屋の隣にソフトクリーム小屋も独立させて、かつ、もう一つイベント用に小屋を作って、イタリア製の皮製品にイニシャルを入れる実演をしたらどうかなってちょっと思ったんですよ。 よく百貨店の催事場では実演をやってるじゃないですか? 友則さんが良いと言ってくれれば、買ってくれたものにイニシャルを入れる実演を見せたらいいのかなって思ったんです」 「あ、あ、最高です!!院長、すごいアイデアです。その分も小屋を作っていただけますか?」 「ふ、まだ分からないけどね。聞いてみますよ。ソフトクリームの場所も混雑しそうだから、カフェと一緒にしない方がいいと思っていたんですよね。 それと友則さんが忙しいなら、イニシャルを入れる人を募集しましょう。ギフトにいいじゃないですか?」 「院長、それすごく良いじゃないですか?ショップが映えますよ。 イタリアの街角風にして欲しいですよね?」と、笑顔の加護さん。 カフェの前からずっとタイルを敷いたテラスが続いていて、最後にショップがあるから、小屋を置くスペースはある。 その後は未来さんに連絡をした。 電話はこっちが話すより先に、 「いや~今忙しいからどうかなあ?」と言うから、笑った! 「いや、建物外の話です」というと、サッと来てくれた。 そしてイタリアショップの前に小屋を3つお願いした。 「マジですか?せっかく広く場所を取ってるのに……」 未来さんが小さな声でなんかボヤいていた。 しかし、俺には聞こえない。 「イベント小屋は下に車をつけて折りたためるようにして、要らない時は外に出してもいいんですけどね。でも菓子とソフトクリームは、それぞれに小屋が必要だと思うんですよ。可愛いのをお願いしますよ」 そしてOKしてもらった。良し。これで解決だ。 その後は友則さんに連絡した。 「はあ、イベントですか?イニシャルは構いませんが、土日だけか、行けない時は応援を呼んでもいいですか?ずっとだと多分、楓が寂しがるのでフルには行けないと思うんですよ」 「はい、いいですよ。来れる時だけでいいです。応援の方もOKです。あとね、友則さんの手作りのバッグを出していいですよ。小屋の中に並べたらいいじゃないですか?」 「‥‥‥いいんですか?そんなことをしても」 「良いですよ。イベントだし小屋は独立しているので、後ろに棚を付けてもらいますから、ついでにお客さんに見てもらうと良いですよ」 「はい、分かりました。父と相談してまた連絡します」 翌日、OKの返事が来た。スケジュールは相談の上でということになった。 楓が「土日はやってもいいけど、私はホテルのバルコニーから見守っています。お昼ごはんだけ食べに来てね」と言ったらしい。 全く、あいつは調子がいいなあ。 楓はリゾート気分らしい。まあいいさ。 いつもお姑さん付きだから、たまには羽根を伸ばさせてやろうか。 それで、しょうがないから、特別にホテルを1室抑えることにした。 払うのは俺だよ。まあ、楓にも少しは出させるさ。 友則さんも一日中では、お疲れ休みをするところがないしね。 三上父は「おう、これでガーデン内に支店が出来たようなもんだ。 バッグを並べて、ついでに売って来いよ」と言われたそうだ。 さすがに老舗の商売人だ。 これで何か足りないなあと思っていたのは、しっくりと収まった。 要はオープン時に華やかさが欲しかったんだよね。 それとショップのはみだしと、菓子やソフトクリームの場所が気になっていたからすべて収まった。 でも最後の厨房の件はまだ収まっていなかった。

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