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第71話 陽一サイド<助っ人・友谷涼>
最後の難題は厨房だった。
今までずっと募集していたんだけど、応募者のイメージとこっちのイメージが全然合わなくて、まだ決まっていなかった。
一流のホテルの人だと、想像と違うと言われた。
物足りないし、素材も大したものは使えない。
作りたいものが作れないと。
確かにその通りだ。
飲食店の人だと、こちらから見てクオリティが今一だった。
練習場所は小林さんがようやく見つけてくれた。
いままでレストランをやっていた空き店舗だ。
短期で貸してくれるそうだ。
皆で見に行くと、確かに店内のテーブルまで使って料理教室は出来そうだし、厨房は広かった。
俺は会議で皆さんに相談した。
「実は以前、佐久間病院の厨房の改革でお世話になった、菜の花フーズのメニュー開発者で、友谷涼さんがいるんですが、来てもらってアドバイスを受けたいんですけど、いいでしょうか?」
「あ!いいですねえ!彼は、佐久間病院でも画期的な成果を出してくれたんですよね!」
加護さんが弾んだ声を出した。
「へえ、そうなんですか。ではお願いしましょうか?
もう藁にもすがりたい思いですよ」と小林さん。
「賛成……」なんだかみんなの声も小さくなっていた。
それで連絡すると、すぐ飛んできてくれた。
「お安い御用です」だって。
生家に来てくれて、会議の前にガーデンや周りの建物も見学していた。
「この財団の話は、噂には聞いていたんですよ。
ミツワの社食にソフトクリームも入れていただきましたしね。
僕でなにかお役に立てますか?」
それでこちらの事情を一通り話した。
彼はずっと録音メモを録っていた。
「なるほど、今のお話だと中々プロの人は決まりにくいかもしれませんね。
少し考え方を変えた方がいいかもしれませんよ」と友谷さん。
「ほう~、例えばどんな感じにすればいいんですか?」と小林さん。
「今の話だと、ホテルの客室の料理は家政婦の皆さんで十分です。
というか、むしろ立花家の料理として出すとブランド価値があって良いと思います。
ここで他の人の料理をあえて入れる必要はないと思いますよ。
すると、あとは財団ビルの厨房ですね。
ここに今プロを入れても、財団スタッフと料理人が双方とも空回りするだろうと思います。
結局、財団のスタッフは今から教えて頑張ったとしても所詮素人です。
急にプロにはなれません。
財団で皆のお弁当を常時3食作るなら、素人でも出来る方法を取り入れたほうがいいと思います。
例えば、手前みそなのですが、菜の花フーズのだし汁や、つゆ、業務用の料理ですね。
まずこれを使うことで味のムラがなくなり、コンスタントに一定の料理が素人にも作れます。
それは私が責任をもって発注も含めて、皆さんをトレーニングします。
これで誰でもコンスタントに一定の料理が作れるようになります。
しかも定食を3食作って提供するなら、コンスタントに出来るような料理人が1名いれば良いと思います。
一流のホテルのプロではなくて、和食の料理屋をやっているような人が良いですね。
よろしければ探してみましょうか?」
ふう~……ここでみんな大きなため息をついた。
「発言してもいいですか?」と珍しく由紀さんが手を上げた。
「今の話を伺って、ものすごくホッとしました。
家政婦はもう長年やっているので皆料理はこまめに出来ますが、今から財団の初めての人に教えていく自信はなかったんです。
しかも同じように教えても、いざやるとなると、微妙に自己流が入ったらアウトです。
もう鍋一杯分が台無しになります。ほとんど修正は難しいんです。
なので、基本のだし汁やつゆがあるのは、本当にありがたいです。
それだけでも安心できます。
あとは離乳食などは管理栄養士に作ってもらえばいいと思います。
ホテル客には立花家の伝わっている料理を出します。
財団スタッフにはフーズの材料を使いつつ、野菜の切り方や、サラダや、ドレッシング、即席漬けなどから覚えていけば、いいと思います。
友谷さん、どうぞご指導をよろしくお願いします」
由紀さんが頭を下げた。
皆が大拍手をした。
「そうなんですね、家政婦の皆さんにはすごく心理的な負担をかけていましたね。
本当に申し訳ありませんでした」
俺は深く頭を下げてお詫びをした。
「いやあ。難しいものですねえ。料理の世界はわかりません。
でも今の友谷さんの話は本当に現実的で納得できました。
院長、小林部長、加護部長、友谷さんに全面的にご指導していただくことで決めてもいいでしょうか?」と支配人。
「はい、もちろんです、最後の頼みの綱なのでね。
ぜひお願いしたいです。よろしくお願いします」と俺。
そういうわけで、空きレストランを舞台に練習をすることになった。
俺や加護さん、支配人、小林さんも含めて皆でやってみることにした。
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