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第74話 陽一サイド<立花家ブランド>
友谷君が講習の中で言っていた話が頭から離れない。
「由紀さんのカレーが美味しい」と皆で言ったら、
「それはぜひ商品化しましょう。うちでやりますよ。
他の料理でもいくらでも作れるので、契約しませんか?」と友谷君が言った。
いや、あれは煽っていないか?
どちらにせよ、あの一言で一気に家政婦さん達の空気が変わった。
家政婦さん達はテンションが上がったらしくて、盛り上がっていた。
皆一気に料理モードに入った。
いや、別に悪いわけではないけどさ。
でも目の色が変わったことは確かだ。
待てよ、その前に商標登録だろうと思った。
すぐ山川弁護士、小林さん、支配人、加護さんを集めてその話をした。
「あ、私もそう思いました。早くブランドを立ち上げた方が良いですよ。
だって家政婦さんのお料理ってすごくおいしいです」と加護さん。
「ああ、それは私も思いました。
やはり今からブランドを登録した方がいいのでしょうか?」と小林さん。
「はい、もちろんです。お任せください。
この件は前に雑誌を作った時から、私も思っていたんですよ。
立花家という名前が勿体ないと思ったんです。
しかも商標登録は申請しても数カ月から1年もかかるんです。
一刻も早く出した方がいいですよ。ロゴもデザイナーに頼みますよ」と山川弁護士。
「では皆さん、挙手をお願いします。賛成の方?」
サッとみんなが手を上げた。
「はい、ではこれで決定します」
俺はそれだけ安心したんだけど、支配人は違っていた。
「そうするとですね、今のスタッフだけでは全然足りません。
これは編集やブランドの維持云々と言うよりも、いかにミツワや立花家に愛着を持った人材が必要か?ってことになると思うんですよ。
前に話したことがあるんですが、ミツワの中にも財団の仕事をしたい人は結構いるんです。
声を掛けて救済してみたらどうでしょうか?
ファンクラブもそうですよ。
強力なリーダーはまだいないんです。
事務所では山下さんがバイト4名をリードして天使たちの電話対応をしていますが、それだけで精一杯です。
広報男子はカフェで必死です。
そうなると、全体から見ると、すごく手薄なのが分かります。
ここは社長にお願いして、社員に声掛けをしたらどうでしょうか?」
シーンとした。
「賛成ですが、今度は営業や人事の部長たちに首を絞められませんか?」
俺がそう発言したら、皆がぷーっと吹き出した。
「いや、それはしょうがないです、絞められてください。
でも殺されはしないと思いますけどね」
冷たく加護さんが言い放った。なんでだよ?
この前、怖かったんだぞ。
そこで支配人が、
「ではお願い書を先に文書で社長に提出しますよ。
内容をまとめましょうか?
1.立花家のブランドを商標登録する。
2.家政婦さん達をメインに、料理のレトルトパックを菜の花フーズの協力の元に販売へ進める。(菜の花フーズから契約して販売したいとの要望がある)
3.家政婦さん達の今までやって来た、掃除方法や、整理整頓の方法、おもてなしの季節ごとのお茶菓子などの本を出版する。
4.すでに出版が決まっている立花家の本の続編を作る。
新築の母屋や、ガーデンの案内本は、まだできていないため、早急に進める。
5.出版や、食品、他に立花家のブランドの維持と活用方法を考えるスタッフが2名必要。
6.ファンクラブの強力なリーダーが必要。
現在はバイトだけで社員が忙しく、采配を振るうに至っていないので、ここに社員2名が必要。
7.颯太の歌手活動や、吉沢達也のバックアップも含め、有望な新人歌手を見つけてフォローする人材に2名が必要。
8.料飲部をリードできる人材に2名必要。
9.経理の責任を持てる人材に2名必要。
10.情報管理を担う人材に1名必要。これでいいですか?」と支配人。
「う~ん、11人か……確かにこれは首を絞められますねえ~」
山川さんが言うと、またみんなで吹き出してしまった。
支配人がここで口を開いた。
「これはあくまでも財団の方向性であって、これらに社員がどれだけ応募してくるかは未知数です。ゼロかもしれません。それならそれで、外部に募集をすればいいだけです。
ただ違うのは、ミツワへの愛社精神なんですよ。
それを外部の人に植え付けるわけにはいきません」
「はい、では今のをまとめてプリントしてください。
皆で社長にお願いに行きましょうか」と俺が促した。
それから10分ほどで支配人が仕上げ、上川秘書に社長へのアポを取ってもらった。
「社長は今時間が空いているそうなので、すぐにどうぞとのことです」
皆でゾロゾロと社長室に向かった。
ノックして中に入ると、社長がニヤッとして、
「また揉め事を起こしますか?」
開口一番に言われた。
俺達も苦笑いを隠せなかった。
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