75 / 103
第75話 陽一サイド<社内募集の許可>
社長室にて、支配人が口火を切った。
「実は皆でお願いがありまして、まとめたものがあります。お目を通していただけますか?」
支配人がプリントを渡した。
社長は眼鏡をはずして、じっくりと読んでいた。
読み終えて2分ほど考えていた。
我々はじっと黙って社長の表情に注目している。
「なるほどね、社員の中にも財団の仕事を希望している者がいるという布石があるけど、それは確かなのかな?」
社長の鋭い視線が支配人に向かった。
「はい、確かです。私が聞いた限りでは数名がいます。しかし、いざ移動するかどうかは本人の判断次第です。
ただ、ミツワへ愛社精神を外部の人に植え付けるのは無理です。
ミツワでキャリアを重ねた人材で、立花家のブランドを維持しようと思ってくれる精神が重要かと思っています」
キッチリと言ってくれる支配人。
「うん、なるほどね。確かに外部の人に急にミツワを愛せよと言っても無理だな。
しかし、最後の有望な新人歌手を見つけてフォローって飛び過ぎていないか?」
来たー! 俺が答えた。
「はい、普通にやれば50億円あっても足りない話です。
しかし、前回吉沢達也君がうちにヘルプを求めて来た時でも、うちにはノウハウが全くなくて、よそに手放して広報スタッフも逸材を逃して悔しい思いをしました。
しかし、その後はしっかりとアニメプラスの手法を完全に広報が記録したんです。
今なら、もし見つけて売れる確信が持てれば、出来るだけ外注で育ててもらい、大元の権利だけはミツワに帰属した方が断然有利です。
活動も1回ずつのエージェント契約にすれば、うちはほとんど投資をしなくて済みます。
しかも、僅かでも一定の利益は確実にミツワに入ってきます。
CMにも顔出しさせればミツワの顔にもなります。
ただ__現状では名誉会長はCMソングは作っても、顔出しはノーなんですよね」
ははっと社長が笑っていた。
「顔出しはいやなんだ、顔はかわいいのにね」だって。
「それと自社のタレントを抱えるとファンクラブの仕事が増えるんですよ。
それは財団の仕事と利益に直結します。
このファンクラブの仕事を希望する人が結構多いんです」
「よし、では数字を見ようか?
今までのファンクラブの実績の数字は持ってきたかね?」
「はい、ご用意しております」
支配人が「社長なら絶対聞かれますよ」と言って、プリントを用意していた。
そして手渡ししたプリントをじっと見ていた。
「ふん、なるほど、実績は徐々に上がって来てるな」
更に俺は説明を重ねた。
「ファンクラブに1名とタレントのフォローに2名と言うのは、この3人で連携を取り、一緒に動いて欲しいんです。もしタレントが数人確保出来て成長したら、また、その時は対応を考えます。
今回は最初の下作りになります。
最低限のスタッフがいないのが問題なんです。
タレントがコンサートをするにしても、何かとミツワや財団の名前が出ます。
これは大きな宣伝効果があります」
「う~ん……」と社長は考えていた。
「吉沢君や名誉会長って年間どれくらいの売り上げを上げてるの?」
とうとう聞かれた。
こんな事もあろうかと思って、アニメプラスに数字を出してもらっていた。
「これはアニメプラスの社長に『秘密事項だけど特別に』と言われた数字です。
これに経費は全く引かれていません。売り上げだけになります」
社長はプリントを手に取ると、
「ほう~」と感心して見ていた。
達也君は地道に活動をしていて、結構稼いでいた。
1年間で8億円以上になっていた。俺も驚いた。
もっとも颯太は外の活動はほとんどしていない。
MVと作詞作曲の印税だけだ。
それで9千万円ほどだった。
「なるほどね。とうとうミツワも芸能方面に手を出すか。
名誉会長が歌手だからしょうがないな。
良し、じゃあ、募集してみたまえ。誰も応募が来なくても泣くなよ」
社長が笑いながらOKを出してくれた。
そして社員食堂や社内の掲示板に募集広告を出した。
受付はメールだけにした。
期間は1週間だ。
さて、どうなんだろう?
ドキドキだ。
ともだちにシェアしよう!

