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第76話 白川支配人サイド<内緒の応募者>
財団のスタッフ募集を社内に向けて発表した。
応募はメールだけで受け付けるので、他の人には分からない。
期間は1週間だった。3日たっても反応がなかった。
「どうですか?応募はありましたか?」院長から聞かれた。
「いや、それが一人もいないんですよ」事実を告げた。
他の広報スタッフもなんだか口が重かった。
「誰かから、広報の仕事について聞かれたりしなかった?」
山下さんに聞いた。
「いや、それは数人からメールで聞かれましたよ。誰とは言えないですけど」
「なるほどね。じゃあ、外部に募集を出す準備をしておきましょうか?」
自分でも言い出しっぺなのに、諦めるためにも早めに言っておいた。
俺って女々しいな。アホだ……。
「やはり給料が下がるかもしれないとか、
出世が見込めないとか、そういうことなんでしょうかねえ」と院長。
「そうですねえ、もうその辺は分かりませんよ。現実を受け止めますよ」そう宣言した。
そして締め切りの最後の日の金曜日。
刻々と時間が過ぎて行った。
締め切り時間は今夜24時だ。
だから退社した夜になるから、その結果は分からない。
分かるのは土曜の朝だね。ミツワは土日が休みだ。
でも出勤した。
早めに行って、恐る恐る非公開のサイトを出した。
特別に外部に漏れないように、このパソコンでないと開けられないようにロックしていた。
そしてメールボックスを開けると……?
え? まさか、18通のメールが来ている。
間違いメールか?
ただの問い合わせじゃないのか?
落ち着け、落ち着け、自分に言い聞かせた。
そしてメールを一通ずつ読んでいった。
総務から、管理、経理財務、人事労務、営業、情報システム部、広報、警備、ナースからも、なんで?
経営戦略室からも一人……マネージャー級の人だ。
エリートを捨てて?
信じられない、知らんぞ。
そして営業から広報になった、山辺さんと八坂さんも来ている。
二人が来たら広報は空っぽになる。なんてことだ。
そして、なんと医務室のたった一人の男子ナースからも__ えー?
ナースが全然いなくなるじゃないか。
呆然とした。
そこへ院長が休日出勤してきた。
「どうでしたか?気になっちゃってねえ」
「大変ですよ。もうミツワが潰れちゃいますよ。これだと間違いなく首を絞められます」
「え?もう、やめてよ。聞いただけで息が苦しくなるよ」
軽く笑っていた。
黙ってパソコンの画面を院長に見せた。
うん?とばかりに画面をずっとスクロールをしていた。
「……」見終わると、椅子の背もたれにそのままのけぞって、ため息を漏らした。
しばらく二人とも無言だった。
「なんか大変なことを言い出したような気がします」
正直に言った。
「だねえ~。どうしようか?やばいね。
俺は二人くらい応募があればいいなあと、思ってたんだよねえ」と院長。
「これはミツワを揺るがせますよね?」
「うん、間違いなくね。人事部長や各部長が猛烈な抗議をして、かつ邪魔しますよ」と院長。
「多分間違いないです。どうしましょうか?」
「とにかく、同じ部署から出てる人は1名だけを選ぼう。
それから、経営戦略室なんて出て行っていい部署じゃないし、情報システム部なんてすごく欲しい人材だけど、向こうはどうなんだろう?
でも間違いなく財団にとっては欲しい人材だよね」
「ええ、その通りです。欲しいです。
うちはそういうIT系が一人もいないので、問題だと思っていました。
ただですね、応募者と面談して決めても、元の部署が承諾するかどうかは別なんですよね」
「ああ、そうだよ。そこで覆る可能性はあるよ」と院長。
「でも応募された以上は全員面談をしてあげるべきですよね?」
それは譲れなかった。
「良いですね。そうしましょう。面談はズームでもいいですよね?」
院長がグッドアイデアを言ってくれた。
「最高ですね。では土曜日に時間を決めて、全員ズームで面接しましょう。
一人15分にして、1時間に3~4人にしましょうか。
場所は、会長室にしてもいいですか?」
「もちろんですよ」
院長が快く承諾してくれた。
面談は僕が言ったスケジュールで予定が決まった。
「では一人ずつ時間を連絡しますが、優先順位を付けましょうか?」と院長。
「はい、そうしましょう」
欲しい人材順に、
1番・経営戦略室 1名
2番・情報システム部 1名
3番・経理財務 2名
4番・総務 2名
5番・人事労務 1名
6番・食堂部 3名
7番・男子ナース 1名
8番・警備部 1名
9番・広報 2名
10番・管理部 2名
11番・営業部 2名
以上で18名だ。
加護さんと小林さんに告げると、土曜日のズーム面談には立ち会うと言ってくれた。
これは大変なことになった。
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