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第77話 陽一サイド<ズーム面接>

 土曜日の朝9時からズーム面接を始める。場所はミツワの会長室だ。 「えー、仕事なの?」と颯太がイヤイヤしてぐずった。 「じゃあ、ズーム面談だから、個室の中から出て来ないならいいよ。 食事だったら、12時から13時までは一緒にいられる」 「うん、わかった。そしたら12時に着くように行くよ」としょんぼりしていた。 かわいそうだけど、しょうがない。 面談の前にある程度は支配人と目星をつけていた。 とりあえずリスト化して、皆にプリントを渡した。 まずは、1番欲しい人材順に、経営戦略室の日比野海斗マネージャーだった。 「お早うございます」 「お早うございます、お手数をお掛けします」 あれ? なんか元気がないな。 支配人が同期だというので、彼に任せた。 「日比野、一体どうしたんだよ、超エリートじゃないか?捨てていいのか?」と支配人。 悪いがちょっと頬が緩んだ。 「……いや、俺には今の部署が合わないんだよ。確かにエリートって言われるんだけど、そもそもエリートの白川に先に越されちゃってさ。俺はどうすればいいんだよ。一歩遅れちゃったよ」 「いや、そういう問題じゃないだろう?今までそんなことは言わなかったじゃないか?」 彼を責めてるのか、それとも友情なのか? 「言えないさ。でも先を越されてしまった!と思ったよ。本当は俺も最初から財団の仕事がしたかったんだよ。 でも言い出す勇気はなかったし、今の部署から抜けられるとも思わなかったしさ」 「今から入っても俺の下になるんだぜ、いいのか?」 「ああ、いいよ。ペーペーでもいいから、とにかく今の部署から抜けたいんだよ」 そこで、ただならぬ雰囲気を感じて俺が質問をした。 「日比野さん、もしかしてどこか具合が悪いんじゃないんですか? 顔色が悪いですよ。それにちょっとチックが出てるようですが」 彼は俯いてしまって、表情がゆがんだ。 「……あ、院長、やっぱりわかりますか?院長にはバレちゃうかなあと思ったんですけど、実はちょっと鬱になってるんです。これ以上、今のところで続けるのは無理かもしれません」 支配人が驚いていた。 「病院には通っているんですか?」 「はい、大学病院に通って半年になるんですけど、環境を変えるのが一番だと言われています」 「はい、分かりました。そしたら、お引き受けしますから、今すぐには無理かもしれないけど、先に診察させてもらえますか? 今日の面談が終わったら、別の場所から連絡します。またズームでもいいですか?」 「はい、お待ちしています。お願いします」 それで終わった。 「大変なことになりましたね」と加護部長。 支配人は呆然としていた。 「今の話だと一刻も早く救済しないと出社できなくなりますよ。 面談が全部終わったら、こちらの希望をリスト化して社長に報告しましょう。 全部は部署の上長がOKするかどうかは分かりませんが、まあ、多めに希望を出しましょうか? でも日比野さんは最優先でお願いしますよ」と俺。 「支配人、大丈夫ですか?」 小林さんが心配して彼に声を掛けた。 「はい、実は小耳に挟んだことがあって、室長がいつもきつく当たるらしいんですよ。 もしかしたら虐めかもしれないですね。 彼だってひ弱な奴じゃないんですよ。 昔はラグビー部ですから」 「はい、その辺は心配しないで。 俺が引き受けますから。では次に行きましょう」 彼を慰めてから、皆で気を取り直した。 次は、情報システム部の長野祐樹さんだ。 「お早うございます」 なんだかこの人も、ちょっとバツが悪そうな表情をしていた。 「財団でどういうことをしたいんですか?」と支配人。 「 あのう、IT関係の事なら大体できます。僕でもいいでしょうか?」 「もちろんありがたいです。財団にはITに強い人がいないんですよ。 だから助かりますが、部署は移動しても大丈夫なんですか?」 それが琴線だったらしい。 「そこなんですよね。多分、嫌がられて移動させてもらえないかもしれないです。 結構色々任されていることが多くて、あとに続く人がちょっと距離が空いちゃうんですよね。 でも僕は財団に行きたいんです。 なんか気持ちが純粋な気がするんですよ。 今のところはなんか……うつうつとしてしまって、風が抜けないというか、とにかく変わりたいんです」 「はい、分かりました。でも給料が下がりますよ。良いんですか?」 「はい、それはいいんです。分かっていますから」 「では、お気持ちはよく分かりましたので、また後日連絡しますね」 それで終わった。 またしーんと暗く沈んでしまった。 「うちの会社はダメだな……」支配人がぽつりと言った。

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