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第86話 陽一サイド<浜野めぐみ心理カウンセラー>

 社長の指示を受けて、情報システムの長野さんに、オンライン窓口のサイト作りを相談した。 「ではサイトは僕が作らせていただきます。 財団のクリニックの精神科のオンライン診療に繋ぎますか? そこから社内向けのリンクを作って、パスワードを入れて、予約する形にしますか? それともまったく別に作りますか?」と長野君。 俺が答える前に加護部長が突っ込んだ。 「いや、待ってください。社員の相談だと営業時間外になりますよね? それだと時間外まで拘束されて、院長が休めなくなってしまいます。 そこは時間を決めてください。 それと光永先生と時間をシェアしても良いんじゃないですか?」 それはありがたいと思ったが、社長の意志は無視できない。 「う~ん、そうしたいけど、社長は俺と相手の社員の二人で共有してという指示なんだよね。 だから診療時間を決めて、その中で予約してもらうようにしましょうか? 時間は……平日なら夜ですね。 19時―20時の中で2枠にして、スタートしましょうか。それで様子を見ますよ」 「はい、承知しました。 クリニックからパスワードで入る社内用のオンライン診療にして、立花院長一人の名前でいいですか?」と長野さん。 「はい、それでお願いします」 そこへ加護部長がいたずらっぽく口を開いた。 「院長、夜間診療だと、うんとぼったくらないと。だって18時以降は自由診療じゃないですか?」 みんながくすくすと笑った。 「そうだった。自由診療の原則は外せませんよ。 そうしましょう。長野さん、一応自由診療だけど、薬代も含めてすべて会社負担だと書いておいてください」 「はい、承知しました」 彼もちょっとニヤッとしていた。 長野さんは30分以内に社内用の窓口を作り、すぐに開設した。 その後は社内の広報部に発表を託し、社長にも書面でその旨を報告した。 「院長、毎日相談がきたらどうします?」と加護部長。 なんか期待しているかのように、パチパチと瞬きをして俺を見た。 俺はどうにか笑って見せた。 「毎日相談が来たら考えるよ」と答えておいた。 その後、社内報で伝えたにも関わらず、全く何も相談が来なかった。 精神科の光永先生の意見も聞いてみた。 「やはり、言いにくいんじゃないでしょうか? ちょっと相談したくてもいきなり精神科だから、本人も認めたくないハードルのようなものがあるんじゃないですか?」 「う~ん、そうだよね。その前の段階で、心理カウンセラーがいればいいのかな? 会社だけじゃなくて、子供の事、親の事、仲間同士の人間関係でもいいしね。 近所の事や、身近な問題で悩んでいるなら、心を軽くしてやることも、社員の為になるよね?」 そう言いながらも、なんか先が見えてきた気がした。 「ああ、それは良いと思いますよ。 心理カウンセラーを入れて、メール相談で受け付ければ、カウンセラーは日中に仕事ができますよね? それで治療が必要だと思ったら、夜、院長が診療されればいいと思いますよ」 ああ、光永先生はいいねえ。頼りになる。 「よし、そうしよう。それと会社だけでなくて、会社外のカウンセリングも始めようか? 人件費が勿体ないもんね。 社員と一般とリンクを分ければいいんだよね。 早速社長に話して来るよ」 その後、社長室のドアを叩いた。 「今度は何だね?ドキッとするなあ」だって。 そんな馬鹿な__ちょっと笑った。 「この一週間は相談が全くありませんでした。 恐らく、いきなり精神科にかかることは、ハードルが高いんだと思います。 そこで、ワンクッション置こうかと思います。 まずクリニックに心理カウンセラーを1名採用します。 ここでメール相談もオンライン相談も受けることにして、社内と社外の二つのリンクを用意します。 内容は仕事に限定せずに、それ以外の身近な悩みにも応えることにすれば、社員の心を軽くします。 その上で医師の診療を必要とカウンセラーが判断すれば、私がオンラインで診療をしようと思います。 これでもいいでしょうか?」 「‥‥‥そうか――やっぱり言いにくいか。 まあ長野君も誰にも相談しなかったしな。任せるから、いいようにやってくれ」 「はい。かしこまりました」 社長はやさしい……。 そういうわけで、心理カウンセラーを募集した。 ところが、なんと二日で応募者が来た。 近くの大学病院に勤務している人で、浜野めぐみさんだ。34歳。 いかにも元気の良い人で、笑顔が親しみやすい女性だった。 「もう、待ってましたよ!なんで募集してくれないのかな?って不思議だったんです。だって弱者の財団なら絶対必要だと思っていたんですよ。私でもいいですか?」 一気に言われた! 加護部長と一緒にククっと笑ってしまった。 もちろん即採用したよ。 そしてクリニックのサイトに書き足してもらった。 文面は彼女に託した。 素敵な誘い文を書いてもらえそうだもんな。

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