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第87話 白川支配人サイド<南フランス?>
朝の会議の最後に立花院長からお願いをされた。
「あのう、申し訳ないんだけど、10月の3週目から月末までの2週間休ませてもらえますか?
ちょっと颯太と旅行に行きたいんですよね」
前にも聞いていたけど、今日は正確な日にちと予定を言われた。
みんな「わあ~」と脱力して背宛てにそっくり返った。
「前にイタリアに行きたいとおっしゃってましたよね?」
僕が確認すると、
「いや~それがねえ、颯太の希望で、ローマからナポリ、ポジターノ。その後はナポリに戻って飛行機でニース。
そこから車でモナコに行き、そこで二泊。その後はニースに戻り、南フランスのプロバンスを回って、スペインのバルセロナに行くことにしたんです。帰りはバルセロナから東京に帰ります」
皆絶句して、うらやましそうに院長を見つめた。
なんか院長は居心地悪そうに顔に手をやって、すりすりしたり、視線をそらして顔を半分隠していた。
「南フランスって素敵な雑貨がいっぱいあるんですよね?
私都内のお土産屋さんに行ったことがあるんですよ。明るいプリントの生地がいかにも南フランスって感じで素敵でした。他にコースターとか、陶器も素敵なのがいっぱいあるんですよねえ」と小松さん。
シ~ンとした。……ったく……空気を読めよ。
でもそのうちに加護部長が笑い出した。
「いや、無理だと思いますよ。だって颯太さんと一緒ですよ?よそ見させてくれませんって」
また、シ~ンとした。
今度は日比野室長と長野さん、光永先生までがくすくすと笑いだした。
「ここ、面白すぎる!もうダメ……」
日比野室長が漏らして笑い出した。
結局皆に伝染して笑い出した。
「仲がいいなあ~。颯太さんも幸せですねえ」
俺の正直な感想だった。
「ごめんね。今度は颯太が二人きりが良いって言うんだよね。
だから仕事を入れられないと思う」
院長が申し訳なさそうに謝った。
「良いですよ、気にしないでゆっくり行ってらしてください」
俺はそう言うしかなかった。
ああ~うらやましい。いいなあ。
ファーストクラスに、五つ星ホテルに、三ツ星レストランだっけ?
それは皆に言えないよね。
俺は言えなかった。
「あ、じゃあ、東京でも買えるプロバンスの土産品やバルセロナの土産品の下調べをしておきましょうか?
東京で買えるものを送ってもしょうがないしね。
なんかチャンスがあったら買い付けというほどではないけど、良さそうなものを航空便で送りますよ。それでも良いですか?」
院長が精いっぱいの譲歩をしてくれた。
「あ、待って!みんなで調査に行きませんか?
それで送料を考えて、向こうで仕入れた方がいいのか?
こっちの店舗に代行して卸してもらうのがいいのか?を調べに行きませんか?」と小松さん。
院長から仕事は出来ないと言われてるのに、なんでいきなり仕入れの話に飛んだのか?はわからないが、小松さんはある意味、建設的な意見を言ってくれた気がする。(笑)
「ああ、それは一度はやっておかないといけないですね。
こっちの注文で卸してくれるなら助かりますしね」と山下さん。
結局何?倉庫が結構いっぱいなのに、院長がプロバンスやバルセロナに行くというだけで、仕入れに行くと皆決めてかかっていた。圧……だな。
それで翌日、皆で示し合わせて3つの店舗を回って下調べをすることにした。
メンバーは広報5人と、院長、俺、日比野室長、加護部長だ。
それとなぜか颯太さんも参加している。
いや、それはいいんだけどさ、颯太さんと院長のSPが物言いをつけた。
車で移動しないと警備できないってさ。
電車じゃ駄目らしい。
それで颯太さんの先導車に2名。颯太さんの車に1名、院長の車に1名。
そして社用車を入れて、4台で連ねて行くことにした。
院長が「明日の予定を言ったら、颯太が行くって聞かないんだよね」
笑っちゃうなあ。
颯太さん曰く「やっぱり俺も行って見ておかないと、ダブってもねえ」って、
……なに?これは仕入れを承諾しているってこと?
とにかく、一度に皆で店舗に入ると怪しまれるので、事前にネットで商品を調べてから出かけた。
二人ずつ組んで時間差をつけ、知らない振りをして商品を見に行く。
そして見終わると、街角で待ち合わせをして、皆の意見を聞いてメモをする。
これは非効率的だな。
そして手ぶらでは悪いので、各自が1個ずつ良いと思うものを買った。
そうやって3店舗を回り、最後はカフェに入ってお茶だ。
そこでタブレット見ながら意見を交わした。
それにしても、皆で一度に外出するのは厳しすぎるよ。
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