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第90話 陽一サイド<出発前後>
何とか颯太を丸め込んだことで、ニースとバルセロナでは買い付けをすることになった。
出発の前日、支配人曰く、
「現地に行ったら、向こうの問屋には時間予約もしてあるし、商品も選定済です。
こちらの事業証明書や、顔写真や名刺も送ってあります。
あとは現地からテレビ電話で映像を私たちに見せてください。
あとはカード決済だけお願いします。
ニースもバルセロナもすべて手配をしておきました」
ああ~とうとう丸め込まれた。
「そうなの?俺と颯太、通訳兼アテンド、SP2名で押しかけても平気ですか?」
「はい、大丈夫です!お任せください」
加護部長がなんか言いたそうだった。
「なに?なんか言いたいことがあるの?」
えへへへと照れ笑いをしつつ、
「もし思い出したらでいいんですけど、ホテルの部屋とか、窓からの景色とか、食事などの画像をちょっと送っていただけないでしょうか?拝見するだけでも、こちらもすごく楽しいと思うんですよねえ~」
事務所にいる皆が、うんうんと頷いていた。
「分かりました。思い出したら送りますよ」
しかし、忘れそうだな。
颯太に頼もうか?
そんなことで、俺達は羽田発の直行便でローマへ向かった。
もちろんファーストクラス。
颯太はそれ以外は考えたこともないもんね。
乗ると、さっさと白いパジャマに着替えた颯太。
着換える間も楽しそうに「えへへへ」と笑う声がやたらに聞こえる。
「先生も早く着換えちゃってリラックスしてください」
指示が飛んだ。
そうだ、画像を送ってやろうか。
乗ってすぐ撮るのか?と思うけど、ひたすら楽しみにしてますって皆が言うんだもん。
パジャマ姿の楽しそうな颯太の画像を送ってやった。
すぐ返信が来たんだけど、「ひっ」それだけだった。
誰だよ。これ。
今回はこの旅行の為に専用のラインのサイトを作り、それをグループチャットで写真を共有するそうだ。
何だか私生活丸出しだな。
早速ウェルカムドリンクの注文が来た。
「先生、何飲むの?」
「アイスティーだね」
「OK」
二人分頼んでくれる。
食事が来るたびに画像を送った。
でもこれから時差が出てくるからなあ。
いいか、無視してもらおう。
今回の旅の秘密兵器は、日本食をいっぱい持ってきたこと。
前回はイタリア飯ばかりですごく後悔したし、つらかった。
今回は、梅干し、梅昆布茶、ふりかけ、昆布の佃煮、インスタント味噌汁。
カップうどん、レトルトの五目飯、茶漬け、個々包装の粉末醤油、以上。
万全の準備だ。
外国の食事はちょっと塩気が足りないんだよな。
でも塩をいっぱい振りかければいいのかと言うと、そういうわけではない。
要はお醤油が恋しいんだよね。
俺は日本人だ。
それでもすぐ食事が出た。
出発が11時くらいだったから、ランチだね。
飛行機がANAだから洋食と和食が選べる。へへへ。
迷わず和食だ。
俺も和食の写真を送った。
颯太は相変わらずステーキにしていた。
「颯太、ステーキの写真を撮って皆に送ってあげてね」
「OK]
ふん、返事も軽くて上機嫌だ。
そんなに待っていたんだね。
颯太、ホテルでいっぱい可愛がるよ。
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