91 / 101

第91話 陽一サイド<ローマの宿>

 ようやくローマに到着。前回も泊まって気に入ったホテルにした。 <ロッコ フォルテ ホテル デ ルシエ> なにしろスイートルームの部屋はうちと同じインテリア。 このホテルのインテリアデザイナーに俺が頼んだ。 白い窓枠に美しいグリーンの部屋が落ち着く。 しっくりとなじんで違和感が全くない。それも珍しい。 「今度は違うホテルが良かったんじゃないの?」と颯太が言ったんだけど、無視無視。 このクラシックでエレガントな雰囲気と静けさがたまらない。 ガーデン側だと、窓から見える樹木の緑も美しい。 夕べは空港からこのホテルへチェックインをしたのが22時近かった。 当然ここでゆっくり2泊だ。 とりあえず 部屋の写真を撮って、スタッフに送って義理を果たした。 そして翌朝の朝食のオーダーシートをドアノブに掛けておく。 これでゆっくりできるぞ。 「颯太、今夜はゆっくり休もう」 「うん、そうだね」 一緒に風呂に入ってから、甘える颯太をかわいがった。 ベッドでは抱き寄せて寝た。 長旅は疲れるよね。 翌朝、目が覚めると、颯太がセミのように俺にしがみついていた。 ああ、どおりでちょっと身体中がこわばっていた。 起きて肩を解さないといけない。 ちょっと身体を動かすと颯太が目を覚ました。 パチッと目を開けて、大きな瞳に俺が映った。 「お早う、夕べは何もしなかったよね?」 ……ギクッ。 「ここで確認するか……」 小さな声で囁くようにつぶやくと、「ウプッ」と笑いを堪えて、 パジャマをめくって胸にすりすりと顔をこすりつけた。 「それ催促してる?」 「うん!」 かわいすぎて、いつもこれにやられる。 「じゃあ、トイレに先に行っておいで」 サッと起きてトイレに小走りに走っていた。 こういう時の颯太はすごく元気。 時計を見るとまだ8時になっていない。 少しは大丈夫か。アラームを掛けておく。 またうれしそうに小走りに颯太が戻って来た。 両手を出すと飛び込んできた。 可愛くて可愛くて……撫でまわしたい。 胸にしがみついたと思ったら、もう唇を尖らせてキスをねだった。 ぶちゅーとしそうでしない。 ちゅんちゅんと唇を味わった後は、 深くキスをして……思いっきり抱くさ。 でも時間は短い。 「颯太、少しだけだよ。続きはお昼寝の時にね」 また唇を尖らせたけど、キスでつぶす。 そして颯太を満足させた後は、まどろんだけどアラームが鳴った。 ああ、起きないといけないか。 顔だけ洗って着替えた。 予約は9時だけど、5分前なら恐らくドアの外でもう待っている。 チャイムが鳴る前にドアを開けると、ボーイがそこに立っていた。 ニッと笑って、「ブオンジョルノ!」 やっぱりな。 「Prego」どうぞって、日本で覚えて来た。 バルコニーに運んでもらった。 彼は丁寧にセッティングをしていた。 ベッドに行き、颯太を起こす。 「颯太、甘くて美味しいオレンジジュースが届いたよ。起きて」 さっきの気持ち良さでとろんとしていた。 「ええ?まだ眠いよ~」瞼が開かない。 「じゃあ、先に食べちゃうよ」 「だめーーっ!」 手を引っ張って半身を起こすと、もう両手を上にあげて万歳してる。 これはTシャツを着せて~の意味だ。 Tシャツを着せてやる。 颯太は海外に出ると甘えん坊100%になる。 知ってる人はいないとばかりに、解放感を満喫しているようだ。 イタリアでは歌手として、あまり知られていないのかな 。 短パンまで履かせてやって出来上がり。 あとは手を引いてバルコニーに行く。 ボーイが寝室を出たところで、ニヤニヤして待っていたので、 「Grazie」お礼を言ってチップを渡すと部屋を出ていった。 「颯太、バルコニーで食べるよ」 「うん」 「今日もいい天気だね」 ああ、イタリアの青い空と太陽……。 鳥のさえずる声。 それだけでいいじゃないか。 オレンジジュースを渡すと、ごくごくと飲んでいた。 「甘ーい!」叫んでいた。 イタリアのオレンジジュースは濃厚で甘くて美味しい。 今度は「あ~ん」と、口を開けて待っていた。 「何食べるの?」 「オムレツ一口」 はいはい、オムレツを口に運んでやる。 「あ~美味しいよ。今度はコルネット食べる」 コルネットって、クロワッサンに似てるけど、卵やバターに砂糖もしっかり入ってて甘いヤツだ。 ちぎって口に運んでやった。 目をつぶったまま、もぐもぐ食べていた。 「颯太、景色は見なくていいの?」 「うん、今は味わってるの」 可愛くって欲しがるままにする。 「今度はサラダを食べる」 あ~んともう口を開けている。 「はいはい」 サラダをフォークで口に入れてやると、頬を緩ませながら、もぐもぐと食べている。 「うれしい?」 「うん」 今までずっと財団で忙しくて、ろくに颯太と向き合えなかった。 海外にいる時くらい、颯太中心にする。 あ、そうだ、食べる前に風景を背景にして、朝食の写真を撮ったんだった。 スマホで画像を送ろう。 日本だと何時頃だろう? 18時くらいかな。 送信すると即、誰かから返信が来た。 「今夜は眠れなくなりそうです」だって。 そんなことは知らん。

ともだちにシェアしよう!