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第94話 陽一サイド<モンテカルロのカジノナイト>
無事にニースの買い付けが終わってホッとしたが、
颯太が疲れたと言うので、すぐにモンテカルロのホテルに戻った。
部屋に入るなり、ベッドに横になって昼寝をしてしまった。
ニースのホテルに気に入ったのがなくて、モンテカルロのホテルに3泊した。
このパリという名のホテルは上質だった。
さすがにセレブが集まるだけはある。
どこもかしこもエレガントで、素敵なインテリアだった。
しかし、問題はその日の夜だった。
そのホテルのすぐ隣というか、窓の外にはあのモンテカルロ・カジノがそびえていた。
どういう立地なんだよ?
カモは来い来いか。
夕食をダイニングで終えると、アテンドが「カジノにご案内したい」と言い出した。
正直、俺は部屋でまったりしたかったんだけど、隣の颯太がパッと目を輝かせた。
「俺、絶対行きたーい!」
もう行く気が満々だった。
大丈夫か、このテンションで……。
正面玄関から外へ出るのかと思いきや、
なんとホテルの1階の奥に、カジノへと続く連絡通路があった。
思わず笑ってしまった。
カモを呼ぶには、出来過ぎだろう?
通路には人の気配がなかった。
連絡通路を抜け、エレベーターで上に上って降りると、更に奥へと進んで重厚なドアを開けた瞬間――いきなり視界が開けた。
そこはライトもまばゆい別世界で、タキシードやロングドレスをまとった華やかな大人たちがカジノに興じていた。
颯太は緊張しているのか、俺の服の裾をぎゅっと掴んで離さない。
「ね、ね、どれをやる?」
「颯太の好きなやつでいいよ」
「うん、じゃあ、まずはルーレットをやろうよ!」
広い長方形のテーブルを大勢の客が囲み、目の前には高くチップが積み上げられている。
テーブルの真ん中あたりで、優雅にルーレットを回しているスタッフがいた。
こういうディーラーみたいなスタッフって、なんて呼ぶんだっけ?
するとアテンドが、「『クルーピア』と呼ぶんですよ」と耳打ちしてくれた。
「じゃあ、颯太。キャッシャーでチップを買ってくるから、ここで待ってて」
その場を離れる。
まあ、同行しているSPが1名ついているから大丈夫だろう。
俺がキャッシャーへ向かうと、護衛のSPが1名ぴったりとついてきた。
無事にチップの購入を済ませて、颯太の待つテーブルへと戻った――が。
「あれ……?」颯太がいない。
きょろきょろとすると、背の高い外人の男三人に、ぴったりと囲まれて泣きそうな顔をしているじゃないか?
「颯太!」大きな声で呼んだ。
でもその男たちは颯太の腰にそれぞれの腰を押しつけて、手は身体を撫でまわしていて、ぴったりとくっついて離れない。
SPに顎で合図をして、男たちをかき分けて颯太の手をぎゅっと引っ張った。
すると、男たちはバラバラにスーッと消えてどっかに行った。
「ごめんなさい……」颯太は涙ぐんでいた。
「どうしたの?」
「だってみんな急にくっついてきて、身動きが取れないし、逃げようとしても放してくれないんだよ」
「SPはどうした?」
「だってSP一人しかいなかったから、身体で男たちをどけようとしてくれたみたいなんだけど、力が強くてダメだったんだ」
なんてこった、何のためのSPだよ。
俺はそのSPを睨んだ。
気まずそうにしていた。
クビにしようか!
俺についてきた方のSPにアテンドを通じて文句を言った。
「主人を守れなくて、それでもSPか?アテンドの会社に報告する」
そして颯太の手を引っ張ってキャッシャーに戻り、チップを戻した。
「颯太、危険だから帰ろう」
「うん、そうする。怖いよ……」
まだ泣きそうにしていた。
アテンドにホテルへ戻ると伝えた。
そして、「さっきの男たちは何だったんだろう?」と聞いた。
なんか言いにくそうにもじもじしていた。
でも耳元で、「もしかして颯太さんはフェロモンが漏れてないですか?」と言った。
衝撃だった。
俺は感じなかった。
慣れ過ぎていたのか?
「颯太、フェロモンが漏れてたかもしれないよ。具合はどうなの?抑制剤は飲んでるよね?」
瞬間「あっ」と小さな声を出した。
「ごめんなさい、昨日は飲み忘れた」
颯太は、茫然としていた。
ああ……これは俺が悪い。
確認するべきだった。
「颯太、部屋に帰ろう。危ないところだったよ。
ここはカジノの中でも特別な場所のようだから、裕福で強いアルファの男が多いんだと思う。
ごめんね。守れなくて」
強く抱きしめた。
「ううん、俺が迂闊だった。5つ星ホテルなら特別に強いアルファでいっぱいだよね?俺がバカだった……」
颯太がそう言って俺の胸に縋りついた。
余計につらくなった。
「いや、お互い様だ。今思えば、SPもベータだったのかもしれない。
一人では勝てないくらい、圧の強い屈強なアルファが3人もいたんだ。もう帰ろう」
部屋に戻るとすぐ抑制剤を飲ませたが、でも1日でも飲まなかったのならその影響はある。
颯太はすぐベッドに横になった。
疲れと衝撃なんだろう。
抱きしめて寝かせたが、本当に危なかった。
これでもっとフェロモンが漏れていたら、
どこかに連れ込まれて3人の男にレイプされたかもしれないんだ。
カジノには、オメガは少ないのかもしれないと思った。
なんて俺は迂闊だったんだろう。
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