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第99話 陽一サイド<アニメプラスと合流>

  桐生社長からメールが来た。ニースに到着したそうだ。 スタッフは、桐生社長、浅田理事、ロニー先生、ダンサーのゲンさんとショータさん。 アニメプラスの照明スタッフを2名。音響担当に1名。 アニメプラスの秘書でフランス語が堪能な三谷慧さん。 総勢9人で来たらしい。……事務所の総力をあげたのか? 全員、ホテルの部屋を取ったそうだ。 9人の往復の旅費と滞在費……か。 だんだん自分の生活が遠くなってきて、逃げ場のない袋小路に追い込まれたような暗い気分だった。 「先生、どうかしたの?」 携帯を持ったまま茫然としている俺を、颯太が心配そうに見ていた。 「ううん、どうもしないよ。練習はできそう?」 「うん、自信はないけどね」 もう颯太にとっては、ここが仕事場になってしまった。 観光なんて関係ない。 俺も遊び気分は全部ふっ飛んだ。 やがて、俺達もホテルに到着した。 朝早くバルセロナを出たから、まだ12時前だった。 フロントに着くと、支配人を呼んだ。 そして「アニメプラスとショーの話は進んでいるのか?」と聞いた。 にこっと彼は笑顔を見せた。 「今までで一番刺激的なショーをゲストに見てもらえそうです。 彼らはすぐセッティングの準備や、舞台作りに入っています。こちらも最大限の協力をします。 日本から、あんなに大勢のスタッフを動員するなんて信じられない。 狭い舞台なので、最大限自由に変更して構わないです。 それから一晩に1回だけのショーなので、予約制にしました。 席やサービスも限定されるし、極力演奏中はボーイが動かないように注意します。 それとリハーサルの為に、宴会場が開いているので、そちらを使ってください。 スタッフの控室としても使って良いです」 ちょっと頬が緩んだ。 アニメプラスのスタッフは、なんてプロ達なんだ。 本気じゃないか? 「今から部屋には入れますか?」 「はい、OKですが、よろしかったらスイートも空いています。 用意した部屋との差額を値引きできますが、どうしますか?」 「ではスイートでお願いします」 良かった。ホッとした。 それがちょっと気になっていた。 俺は狭い部屋では息が詰まる。 「颯太、スイートに変えてもらったよ。先に部屋に入ろう」 「うん、わかった」 スーツケースをボーイが運んでくれるので、スムーズにスイートの部屋に入った。 もうなじんだ部屋だから、ホッとした。 着くと、桐生さんにメールした。 すぐ折り返し電話してくれた。 「あ、お疲れ様です」 「今ホテルに着いて部屋に入りました。 皆さんは昼食はどうされますか?ご一緒しましょうか?」 「はい、そうですね。もうお昼ですね。先にそうしましょう」 ロビーで合流した。 桐生社長や夏さんもにこにこで上機嫌だな。 モナコの空気のせいかな? 「あ、達也もう来ていたの?」 颯太が達也さんに声を掛けた。 「せんぱーい!お疲れ様です。今回はありがとうございます」 ペコリと頭を下げる達也君。 凄く元気そうで、溌溂としていた。 そして後ろにぴったりと寄り添っているのは、イケメンで長身の副社長の旦那さんだ。 「あ、松永さんとご一緒にいらしたんですね?」 「はい、お久しぶりです。今回は大変なことになりましたね」 静かに柔らかく微笑んでいた。余裕だな。 打ちひしがれている俺とは大違いだ。くそー。 そこへアニメプラスのスタッフたちがゾロゾロとやって来た。 「あ、ゲンさんにショータさんも来てくれたんですかー?」 颯太が大喜びをしていた。 「いえ~い!」と皆でハイタッチをしていた。 おまけにハグまでしていた。仲良しだ。 「そしたらランチは、ヨットハーバーのカフェでもいいでしょうか?皆行きたがってるんですよ」と夏さん。 「はい、良いですよ。皆さんで行きましょう」 そして外に出ると、そこは変わらず明るい太陽に海が青い。 「ああ~すごいなあ~モナコだー!」とゲンさんが叫んだ。 ショータさんもはしゃいでいた。 「颯太さん、ありがとう!よくバーの仕事を引き受けてくれました!」とゲンさん。 「マジ、そうだよなあ」ショータさんも浮かれていた。 スタッフ達も皆、明るい表情で、 「まさか仕事でモナコに来れるなんて信じられないです。 みんなの羨望と嫉妬を浴びてきました!」と秘書の三谷さん。 ヨットハーバーには白いヨットがいっぱい係留していた。 モナコらしい絵になっている。 カフェにはスムーズに皆で入れた。 こっちの人の昼食時間はだいたい14時くらいがピークらしい。 達也さん達にも、SPにドライバーやアテンドが付いていた。 こっちも同じくらいだから、本当に団体様御一行になってしまう。 それでも今は12時半くらいだから、カフェはまだ空いている方だね。 「達也、パリの他にどこかへ行ってきたの?」颯太が聞いていていた。 「いいえ、俺は旦那さんの出張について来ただけで、遊びでーす」 いいなあ、お気楽だ。 だから明るい表情なんだ。 「先輩はどこを回ったんですか?」 「ええとね、最初にローマで二泊、ナポリに行ってランチして、ポジターノで2泊。ナポリから飛行機でニースに行って、車でモナコに来て3泊。それからニースに行って飛行機でバルセロナで2泊。本当はそこで帰る予定だったんだけど、モナコに戻ってきたというわけです」 皆がシーンとして聞いていた。 羨望の眼差しが俺達に集中した。まずいな。 「ああ、いやねえ、今回はバカンスなんだけど、ニースとバルセロナで商品の買い付けの仕事があったんですよ。 財団のショップももうできていますしね。来年の2月にガーデンや財団ビルがオープンすることになりました。 近くなりましたら、ご案内を差し上げますよ」 「へえ、もう近いですねえ。わ~どうしよう……」と桐生社長。 ちょっと呆然としていた。 何やら、考えを張り巡らしているな。

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