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第7話 呪具ドラッグ

 平和な日々は突然、危険に侵食される。呪詛に関わる者の日常だ。  この日、典薬寮に飛び込んできた情報に、一同が騒然とした。  広間に集まった一同の前で、桂伽がノートパソコンを持って立った。  大きなソファに腰掛ける宇緑の隣で、終夜が眉を顰めた。 「呪具ドラック……?」  桂伽が無言で頷く。パソコン画面を宇緑に向けた。全員が画面を覗き込む。  桂伽が画面に写真を表示した。 「これが、ドラックの外見」  ドラックは片手の掌に収まる程度の小さな瓶に入ったリキッドだ。  紫色の液体も容器もお洒落で、一見すると香水のアトマイザーのように見える。 「最初は一般のドラックだと思われていたみたい。ドラック使用者の変死が続いて、警視庁が公安部の特殊係に案件を移した」  公安部特殊係十三課は、怪異を取り締まる国直属の機関だ。 「実際は一般の違法薬物に呪術を施して呪殺する。つまり、呪具ドラッグ」  そういう呪具なら、専門家なら簡単に作れる。かえって犯人を絞りづらい。 「特殊係に案件が移ったのなら、問題ないのでは?」  終夜の問いに、桂伽が画面を変えた。呪禁師向けの地方新聞だ。  呪具ドラッグの関西への流入を懸念した記事が書かれていた。 「東京の検挙は成功したみたい。検疫を逃れたドラックが京都に流れている可能性がある」  ノートパソコンの画面を見て、皆が息を飲んだ。 「特殊係の京都支部、今は動けないね」  粧が宇緑を見詰める。 「大妖怪の大捕物で、出払っているよな」  遊馬が息を飲んだ。 「特殊係の京都支部って、妖怪狩りが得意な集団だからねぇ。どちらにしろ、ドラッグ摘発みたいな仕事には不向きだね」  宇緑がマウスをスクロールしながら画像の呪具ドラッグを観察している。 「俺たちの仕事かな」  宇緑が呟く。皆の纏う気が、張り詰めた。ビリビリと痛いくらいに空気が尖る。 (いつもの仕事とは、違う。皆の目が、本気だ)  緊張した空気に、螢緋は圧倒された。 「それじゃ、桂伽は引き続き情報収集、粧と遊馬は街中で呪具ドラッグ探し。終夜は特殊係に連絡とって」  宇緑の指示に頷くと、全員が同時に立ち上がり、部屋を出て行った。統率の取れた動きに、驚くばかりだ。 「宇緑、俺は?」 「螢緋は俺と一緒。今回の件、俺から離れないようにね」 「わかった」  螢緋は頷いた。宇緑の指示なら、素直に従う。けれど、どうしてか胸がざわつく。 「……やっと動き出したか。長かったな」  宇緑の口端が、薄らと上がった。その目は自身に満ちている。なのに、螢緋の胸にはわずかな不安がこびり付いていた。

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