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第14話 桂伽とゲーム

 リビングの隣にある階段を地下に向かって降りる。  目の前に部屋の扉が現れた。 「桂伽、螢緋だ。入っていいか」  ドアをノックして、声を掛ける。 「……螢緋? ちょっと、待って」  ドタバタと音がする。  片付けでもしているのだろうか。 (いつも、散らかしっぱなしなのに)  資料やゲームやお菓子が雑多に放置されているのが常だ。  桂伽の部屋に来ると、いつも掃除と整理整頓をしてから部屋を出る。  しばらく待っていると、内側からドアが開いた。 「お待たせ。入っていいよ」  桂伽が、のっそりと顔を見せた。 「仕事中だったか? 忙しいなら、これだけ渡して……」  終夜に頼まれたお菓子の箱を差し出す。  桂伽の手が菓子を通り越して螢緋の腕を掴んだ。 「入って」  入ってというか、引っ張り込まれた。  扉が閉まると、部屋の中が途端に薄暗くなった。  何台もあるパソコンのモニターが暗い部屋を照らす。  パソコンの隣にあるガラス張りの解析台に電気が付いている。 (あれは、粧が買った呪具ドラッグだ)  解析台の中に、呪具ドラッグが宙吊りになっている。  解析は桂伽がしていると、先ほど終夜も話していた。 「解析中か?」 「ちょうど、終わったとこ」  桂伽が掌サイズの四角い箱を螢緋に手渡した。 「これ、宇緑さんに渡して」  黒い箱に赤いリボンがかかっている。アクセサリーの衣装箱みたいだ。 「わかった」  頷いて部屋を出ようとした。螢緋の腕を、桂伽が掴んだ。 「待って。まだ帰らないで。仕事して疲れたから、螢緋と遊びたい」 「でも、これを宇緑に渡さないと」  螢緋は手の中の小箱に目を落とした。 「急いでないから、あとでいい。寝る前にでも、渡して。それより、俺と遊ぶほうが今は大事」 「そうか。それじゃ、桂伽と遊ぶ」  小箱をポケットに仕舞うと、螢緋は絨毯の上に腰掛けた。  桂伽が部屋の電気を付けた。明るくなると、それなりに広い部屋だとわかる。  部屋の隅から、桂伽が大きな箱を出してきた。箱の中にはたくさんのボードゲームやカードゲームが入っている。  普段、パソコンで仕事しているせいなのか、桂伽はアナログゲームが好きだ。  終夜や宇緑、遊馬と朝まで麻雀をしている時もある。 「テーブルホッケーやろ。その後、リバーシして将棋と囲碁もしたい」  準備する桂伽の顔を覗く。目の下にクマができていた。 (桂伽が疲れでハイになっている)  大きな仕事が入ると桂伽は数日間、不眠不休で集中して作業する。  作業が続くとハイになって、限界まで頭を使わないと止まれなくなる。  無理に寝かせようとしても、目が冴えてかえって眠らない。電池が切れるまで動くしか、解決策がない。  螢緋は時計を眺めた。今は昼の一時だ。 (夕飯までに桂伽をゲームでヘトヘトにして、風呂に入れて、ご飯を食べたら、ちょうど良く電池が切れるかな。切れたら、すぐにベッドに寝かせよう)  自分の中で計画を練って、テーブルホッケーのスティックを持った。 (呪具ドラックの解析、大変だったんだな)  持ってきた菓子の箱を、螢緋は空けた。  中にはクッキーがたくさん入っていた。その中の一枚を手に取る。 「桂伽、口を開けて」  言われた通り、桂伽が口を開けた。クッキーを放り込んだ。 「美味しい?」 「ん、美味しい。螢緋も食べなよ。あんずジャムクッキー、あるよ」 「本当だ。いただきます」  二人でクッキーを摘まみながら、テーブルホッケーを始めた。 (終夜のタイミングは完璧だった)  桂伽の仕事が終わる時間に合わせて、螢緋を送り出したのだろう。  仕事明けハイの桂伽が電池切れで萎むまで、螢緋はゲームに付き合った。

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