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第27話 余計なこと
目が覚めたら、宇緑のベッドで寝ていた。
いつの間にベッドに入ったのか覚えていない。頭がぼんやりして、体が怠い。
(何だろう、変な感じだ)
昨日、鈴音に洗脳されたせいだろうか。
「おはよう、螢緋」
宇徳が部屋に入ってきた。
「ん、おはよ……」
いつも通り普通に挨拶をして、螢緋は顔を上げた。
「おはよう、じゃない。怪我は、平気なのか?」
慌ててベッドから飛び起きた。
転びそうになりながら宇緑に駆け寄る。腹に、恐る恐る触れた。
「終夜の治療が早かったからね。優秀な治癒術師だから、ほら」
宇緑が服を捲る。傷跡が残っていてまだ赤いのが痛々しい。
だか、綺麗に塞がっていた。
「よかった。本当に良かった」
力が抜けて、へなへなとその場に座り込んだ。
「螢緋は大丈夫? 楽々浦鈴音って呪毒師に酷い洗脳、されたでしょ」
宇緑の纏う気が尖った。
(いつもより、怒っている)
表情は穏やかだが、殺気が隠しきれていない。こういう宇緑は珍しい。
「頭がぼんやりして、あまりよく覚えてない。ごめん」
洗脳されていた時の記憶も曖昧だ。
「謝る必要、ないよ。螢緋が悪いわけじゃない」
宇緑の言葉に、螢緋は首を振った。
「宇緑に怪我を負わせたのは、俺だ。どんな状況でも、俺が悪い」
螢緋は決意して顔を上げた。
「もう、こんな風にはならない。宇緑に怪我させたりしない」
宇緑が眉を下げた。
「嬉しい言葉だけど。螢緋にはもう一度、俺を刺してもらわないといけないかな」
「え……? どうして?」
途端に不安な気持ちになった。
同時に、鈴音の言葉を思い出した。
「俺の中に、呪詛があるから?」
螢緋の中には宇緑を殺す呪詛が埋め込んであると、鈴音が話していた。
「その呪詛を祓うためには、発動させないといけない。この三年、螢緋の中の何かを見付けられなかったのは、呪詛が沈黙していたからなんだ」
螢緋は絶句した。そうなると益々、鈴音の思惑通りだ。
(アイツは、一体どこまで計算して……どれだけ俺たちを玩具にしたら気が済むんだ)
じわりじわりと、静かな怒りが湧き上がった。
「俺はまた、宇緑を傷付けないといけないのか?」
怒りと悔しさで、涙が滲む。
宇緑の指が、螢緋の頬を撫でた。
「大丈夫、俺は死んだりしないし、螢緋を傷付けもしない」
螢緋は何度も首を振った。宇緑が死ぬのは絶対に嫌だ。
螢緋が傷付くのも、宇緑は嫌がる。
(他に、方法は……俺が典薬寮から、消えること)
宇緑の手が螢緋の手を握った。思わず螢緋は顔を上げた。
「俺が何とかする。余計なこと、考えちゃダメだよ」
螢緋は息を飲んだ。まるで考えを読まれたようだ。
思わず目を逸らした。そのまま、螢緋は小さく頷いた。
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