43 / 44
第43話 明けない夜
闇に螢緋の黒髪が溶ける。宇緑の瞳の中にだけ、緋色の瞳が映っている。
宇緑の顔が近付いて、唇が重なる。
性急な唇が、螢緋の唇を濡らしていく。
「螢緋……螢緋、もっと」
腹の中で、宇緑が熱を増す。
硬く奥を穿つソレが、宇緑の想いそのものみたいだ。
「ぁっ……あ!」
突かれるたびに腰が浮く。逃げようとする螢緋の腰を、宇緑が掴まえる。
皮膚と皮膚が打ち付け合う乾いた音が部屋に響く。
その合間に螢緋の艶めいた声が漏れ聞こえた。
「うろく、はげし……」
花山稲荷大明神から戻ってすぐ、宇緑が部屋の雨戸を閉めた。
真っ暗な部屋の中で、唇を貪って、強く求められた。
「我慢できなくて、ごめん……どうしようもなく、螢緋を抱きたい。螢緋を、ぐちゃぐちゃにしたい」
獰猛な獣のような瞳が、螢緋を見下ろす。
まるで喰われる前の小動物にでもなったように身が竦む。
「俺の……俺だけの、螢緋」
宇緑が与える刺激で、腹の奥までジンジンと熱い。
快感が脳を突き抜けて、我慢できない。
「ぁっ、はっ……宇緑、好き」
宇緑の顔を引き寄せて、口付ける。欲に塗れた言葉を注ぎ込んだ。
「愛してる、螢緋。もっと善くなって、もっと俺を感じて……俺に染まって」
宇緑の唇が、螢緋の胸を吸い上げた。
「んぁっ」
チクリと甘い痺れが走る。
赤い痣が、花のように咲いた。
「神様が手放すなら、もう俺の螢緋だ。俺以外のものになんか、させない。相手が神だろうと、もう渡さない」
欲がたっぷり乗った言葉を、欲情した唇が零す。
その様がたまらなく艶めいて、目が離せない。
背筋を昇る快楽と、目に映る宇緑の色香にあてられる。
(宇緑が好き。もっと欲しい。それしか、考えられない)
ただひたすらに宇緑が欲しい。膨れ上がる欲を抑えられない。
「もっと……もっと、欲しい。宇緑だけが、俺の全部」
宇緑が、一際奥まで入り込んだ。
螢緋の中を総て埋め尽くすみたいに隙間なく、満たされる。
「あぁ! も、いっ……」
「一緒にいこう、螢緋」
宇緑が螢緋の手を握る。指と指を絡めて、強く握った。
(良かった、これだけ絡まれば、離れない)
もう二度と離れない。永遠に傍にいる。
(宇緑の傍にいられるのなら、穢れたって構わない)
強い快感が、腹の奥から疼きと切なさを膨らませる。
「あぁっ!」
昇り切った快楽が、腹の奥で大きく弾けた。
(お腹の中、熱い……宇緑でいっぱい)
自分の熱なのか、宇緑の熱なのかも、わからない。
二人の熱が溶けて混じって、一つになったみたいだった。
「螢緋……愛してる」
言葉と一緒に唇を塞がれた。言葉を封じられたみたいだった。
(俺も、愛してる)
そう伝えたいのに、唇を離してくれない。
仕方ないから舌を絡めて、ありったけの想いを宇緑に流し込んだ。
長く重なった唇が離れる。急に熱が遠ざかるのが寂しくて、指を伸ばした。
「……もっと、愛し合おう。俺を、宇緑で汚して」
彷徨う螢緋の指を、宇緑の指が掴まえる。
宇緑の唇が、螢緋の首に、胸に、腕に、背中に、赤い痣の花を咲かせていく。
「汚してあげるよ。俺でしか汚れられない螢緋にしてあげるから」
後ろから背中を食まれた。皮膚が、じんわりと甘く痺れた。
(この甘さを知ったら、もう逃げられない)
後ろから激しく腹の奥を突き上げられた。
「ぁ、あ! ぅんっ」
宇緑の手を握って、快楽に耐える。
永遠に終わらない夜の中で、最愛の人に抱かれ続ける。
こんな背徳なら、落ちてもいい。
(このままずっと宇緑に、落ちていたい)
最愛の手を見失わないように、握った指を深く絡めた。
ともだちにシェアしよう!

