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第25話

藤沢に呼ばれてハッとし、碧は勢いよく立ち上がった。 「ここ数日来てなかったようだけど、何かあったのか?」 「いえ…すみませんでした」 何を言われるのかと思えば、一希から発せられた言葉はまさに教師としてのもので、妙な寂しさを感じてしまう。 たった数週間前は「碧」と呼んで、体を重ねていたのに、なんだかよそよそしい。 教室だからというのもあるだろうが、一希はもう碧の名前を呼んではくれないだろう、と碧は薄々感じていた。 もう碧には一希を求める資格はないのだ、と思い、碧は一日中一希のことを考えないようにして過ごした。 「なぁ、碧知ってるか?」 「ぇ? 何を?」 放課後になり、帰り支度をしていると、突然藤沢が慌ててやってきた。 「中峰が見合いするらしいんだよ! 職員室で話してるのを二年の奴が聞いたらしいんだよ。あの中峰が見合いなんて想像できないから、みんな大騒ぎだぜ」 「見、合い…?」 正直、見合いという言葉を聞いた碧の耳には、もう藤沢の言葉は入ってこない。 ただ一希の見合い話にショックを受けるだけで、その場に立ち尽くしていた。 「碧? おぃ、どうした?」 「ぁ、ううん。なんでもない」 それから藤沢に軽く挨拶をし、教室をあとにする。 その夜、碧はベッドに身を預けながら、一希のことを考えていた。 見合いと言っても、まだ噂であって、一希本人から聞いたわけではないのだ。 もしかしたらただの噂かもしれない、という淡い期待が拭えなかった。

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