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第29話
碧の家に着けば、彼の両親が出迎えてくれた。
二人に碧が目覚めたことを告げれば、安心したように涙を流した。
「碧くんのことは私が観てますから。任せてください」
「中峰先生、ありがとうございます」
「いえ…」
母親にお礼を言われ、罪悪感が一希を襲う。
元はと言えば、碧が事故に遭った原因は一希にあるのだから、碧の両親には申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
これ以上二人と居るには苦しすぎて、碧の着替えを受け取ると、足早に家を出ていく。
「本当に…申し訳ありませんでした」
それでも何も言わずには帰れず、家の外から深々と頭を下げた。
(碧…やっぱり俺はお前を諦めるなんてできなかった)
心の中でそう呟き、一希は駆け足で夜道を進んでいく。
その方向は病院とは逆だが、一希には病院よりも先に行かなければならない場所があった。
そこは一希の家から数分走った場所にある一軒家。
白い屋根が印象的なそこは一希の実家だ。
見慣れた実家のドアを開けると、乱暴に靴を脱ぎ散らかして、真っ先に母親の元に向かった。
「あれ? 一希? こんな時間にどうしたの?」
「母さん、見合いの話のことで伝えないといけないことがあって来た。今じゃないとダメなんだ」
「見合いの話で? 何か気に入らないことでもあるの?」
一希の気持ちなど知らない母親は、見合いさせる気満々で、気に入らないなら別の人を──と言ってくる。
息子には結婚してほしいという親心なのだろうが、今の一希にはそれを踏みにじってもいいという覚悟があった。
「俺はたとえいくつになっても女性と結婚なんてしません。だから、見合いも断ります」
「結婚しない? 一希、何言ってるの?」
やはり母親は困惑したように慌てだしたが、こればかりは仕方ないのだ。
一希は母がショックを受けるのを覚悟で自分の気持ちを話し始めた。
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