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第31話

これ以上碧を傷つける前に、自分の気持ちをはっきりさせたかった。 今の状況のまま碧が記憶を取り戻したら、また傷つけてしまう。 そうなる前に早く見合い話にケリを着けたかった。 「そんな…よりによって男子生徒を好きになるなんて…。あなた、いつからそんな非道な人間になったの!?」 泣き叫ぶ母親に嘘だと言って、出任せでも安心させてやりたい。 きっと母親もそれを望んでいた。 だけど、今はそんな出任せは誰の為にもならない。 「母さん…傷つけてごめん。でも、碧を愛することが非道だっていうなら、俺は非道な人間でかまわない。いくら母さん達を傷つける結果になっても、俺の気持ちは変わらないから。絶対に見合いはしない」 酷いようだが、いくら母親でも一希の気持ちだけは変えられない。 もう二度とこの家には帰ってこれない覚悟で、一希は実家を後にした。 それから、碧はみるみる回復し、車椅子を使って移動できるまでになった。 相変わらず母親とは連絡を取っていなかったが、一希は後悔などしていない。 碧を失うことよりも、自ら家族を切り捨てる道を選んだのだから。 「碧、明日はいよいよ退院だな。しばらくは俺の家で過ごすことになるけど、すぐに記憶を取り戻して、また普通の生活が送れるから」 「ありがとうございます、中峰先生」 碧は相変わらず他人行儀だが、それでも側に居られるだけでよかった。

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