32 / 43

第32話

それから最後の夜を碧の側で過ごし、翌朝二人で一希の家に戻った。 「当分はここが碧の家だから、遠慮なく過ごしなさい」 「はい…ありがとうございます」 遠慮がちな碧の頭に手を添え、そっと撫でる。 少し前なら触れるだけで震えていたのが、今は黙って受け入れていた。 そんな少しの変化でも、碧が自分に心を開いてくれていると思うと、一希は喜ばずにはいられない。 「とりあえず、今日はゆっくり休みな。明日から少しずつリハビリしていこう」 「はい」 その翌日から、一希は学校を休むことにした。 一日中家に居て、碧のリハビリを手伝いながら、記憶を取り戻せるよう、毎日学校での碧のことを話してやる。 もちろん、あの補習のことは言えなかったが。 「碧、今日は病院に行く日だよ」 「はい、先生」 碧は週に一度、病院でリハビリを受けている。 まだ車椅子なしでは生活できないが、最近は足を少し動かせるようになっていた。 自分で車椅子を乗り降りできるようになり、体の方は順調だ。 医者も順調に回復している、と言っていた。 「よかったな、碧。すぐに歩けるようになるから」 「ほんとですか!?」 そう言って笑顔を浮かべる碧は、よく学校で見ていた無邪気な笑顔そのもので、彼が彼に戻りつつあるのだ、と嬉しく思う。 記憶を取り戻しても、この笑顔が見られたら、と一希は心底願った。

ともだちにシェアしよう!