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第32話
それから最後の夜を碧の側で過ごし、翌朝二人で一希の家に戻った。
「当分はここが碧の家だから、遠慮なく過ごしなさい」
「はい…ありがとうございます」
遠慮がちな碧の頭に手を添え、そっと撫でる。
少し前なら触れるだけで震えていたのが、今は黙って受け入れていた。
そんな少しの変化でも、碧が自分に心を開いてくれていると思うと、一希は喜ばずにはいられない。
「とりあえず、今日はゆっくり休みな。明日から少しずつリハビリしていこう」
「はい」
その翌日から、一希は学校を休むことにした。
一日中家に居て、碧のリハビリを手伝いながら、記憶を取り戻せるよう、毎日学校での碧のことを話してやる。
もちろん、あの補習のことは言えなかったが。
「碧、今日は病院に行く日だよ」
「はい、先生」
碧は週に一度、病院でリハビリを受けている。
まだ車椅子なしでは生活できないが、最近は足を少し動かせるようになっていた。
自分で車椅子を乗り降りできるようになり、体の方は順調だ。
医者も順調に回復している、と言っていた。
「よかったな、碧。すぐに歩けるようになるから」
「ほんとですか!?」
そう言って笑顔を浮かべる碧は、よく学校で見ていた無邪気な笑顔そのもので、彼が彼に戻りつつあるのだ、と嬉しく思う。
記憶を取り戻しても、この笑顔が見られたら、と一希は心底願った。
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