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第33話

毎日碧の傍に居て、一希は気づいたことがある。 記憶を無くして以来、何もかもが変わってしまったと思っていたけど、碧自身は変わっていなかった。 いくら昔を覚えていなくても、変わらない笑顔を向けてくれる。 その笑顔だけは今も昔も変わらない。 そんな中で、碧は少しずつだが、記憶を取り戻していった。 まだ事故直前の記憶は戻っていないが、一希は幸せだった。 それは事故前のことを思い出せば、碧は離れていってしまうのではないか、という恐怖があったからだ。 このままの生活が続けばいいと思っていたが、碧の記憶はそれを待ってはくれなかった。 日曜の午後、久々に母親が一希の家に来ると言う。 母親とは見合いを断って以来、全く連絡を取っていなかったから、正直気まずかった。 碧が一希の家で暮らしているということは、碧の家族に伝えたあとに実家にも手紙で知らせてはいたが、今までなんの反応もなかった。 今になって何を言いに来るのか、と一希は不安に包まれる。 それでも不安を碧には気づかれたくなくて、必死にいつもの自分を取り繕った。 「先生、今日はなんか落ち着かないね」 「…そうか?」 だけど、碧にはどこか違う、わかってしまったのだろう。 それは記憶がなくても、直感のようなものだった。 「なにか悩みでもあるんですか?」 「いや、なんでもないよ」

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