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第35話
「やだっ…一希、せんせ…結婚なんて、しないで…。僕…やっぱり先生が…好きだから」
「碧…お前、記憶が戻ったのか!?」
泣きながら嘆く碧に、彼の記憶が戻ったのだと直感する。
一希の問い掛けに、碧は小さく頷いた。
「そっか。よかった…」
記憶が戻れば、事故前の思い出させたくない記憶も取り戻すことになると思い、今までは彼の記憶が戻ることに多少の恐怖を感じていた。
だが、今はそんなことよりも、ただ彼が記憶を取り戻したことが嬉しくてならない。
「よく、ない…。先生は結婚するくせに…優しくなんかしないでっ! 僕は、ずっと好きだった。体だけでも先生と繋がってれば嬉しかったのに。なのに…突然やめるって言うから…僕、もうどうしていいかわかんなくて…。先生を忘れるために…いろんな人と…エッチしたの…」
もうこれで終わりならば、最後に全てを話そうと思った。
せめて自分の気持ちだけは知っていてほしかったから。
一希の母親もいつの間にか帰っていて、二人だけの部屋は妙な空気に包まれる。
全てを話した碧はボロボロと涙を流し、一希は初めて聞かされる事実に目を見開いていた。
「ごめんな。お前がそんなに思い詰めてたなんて…知らなかった。碧、俺さ…見合いなんてしてないから。ちゃんと断った」
「う、そ…なんで?」
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