36 / 43

第36話

学校ではあんなに話題になっていたのに、そのお見合いをしないなんて、一希の立場を考えれば、信じられない話だ。 きっと学校にバレたら、いろいろと言われるだろう。 相手が気に入らないなら、見合いしたあとで断ればいいことだ。 「俺はね、目の前に好きな相手が居るのに、見合いなんてしたくないんだ。いくら周りが騒いでもな」 「好きな、相手?」 「こら、また不安そうな顔すんなよ」 見合いをしないと言えば驚いて、好きな相手が居ると言えば不安顔になって、忙しいやつだな、と笑みをこぼす。 それでも、彼がこんなにも取り乱している原因は自分なのだと思えば、優越感に満たされた。 「だって…お見合いしなくても、好きな人が居たんじゃ…変わらないよ。そんな相手が居るなら…僕に、あんなこと…しないでほしかった! そしたら…こんなにも、好きに…ならなかったのに…」 あの補習で一線を越えなければ、ここまで辛い思いはしなかったはずだ。 きっと普通の生徒と教師の関係でいられた。 「碧、俺の話を聞け。俺が好きなのはお前だよ。碧が事故に遭って、もう二度と会えないかもしれないと思った時、やっとわかった。俺にとって大事なのは碧なんだって」 「ぼ、く…?」 話が突発的過ぎて、碧は理解しきれていない様子だ。 この間までは一希にフラれて自暴自棄になっていたのに、その彼が自分を好きだと言っている。

ともだちにシェアしよう!