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第38話
碧は徐々に学校へも通うようになり、以前の彼に戻りつつあった。
今は互いに気持ちも素直に伝え合い、言いたいことはなるべく言うように心がけている。
でも、そんな碧だが、一希に言っていないことがひとつだけあった。
それは進路のこと。
三年になる碧はもうすぐ卒業だ。
一希は毎日のように進路の話をしてくるが、碧はいつもはぶらかしていた。
別に隠したいわけではないが、はっきりと決まるまでは内緒にしておきたいのだ。
なぜなら、碧の進路には一希が関係していたから。
「碧、今日こそは進路について話してもらうぞ」
「ぁー…それは…また今度、ね」
「ダメだ。今日は話すまで帰さない」
一希の目は本気で、碧も今日こそは誤魔化せないと悟り、大人しくなる。
それに、ここは一希の家だがら、主導権は一希にあることをわかっていた。
「わかりましたよ…。僕…教育学部を受験しようと思ってるんです」
「碧…教師になりたかったのか!?」
今まで教育学部に行きたいなんて聞いたことなかった為、一希は心底驚いている。
なにしろ、勉強嫌いの碧と教育学部なんて無縁だと思っていたのだから。
その彼から教育学部に行きたいなどと言われて驚かない方がすごいとさえ思ってしまう。
「そうじゃないんだ。ただ…僕みたいにバカなことやっちゃった子ってたくさん居ると思う。この学校にだってたくさん居るよ? 僕は自分がバカなことしてるって分かってたけど、自分じゃやめられなかった。誰かに…先生に助けてほしかった」
「碧…そんなこと、考えてたのか…」
男たちと寝ていたことを碧が後悔しているのは知っていたが、そんなに悩んでいたことは知らなかった。
今さら後悔しても遅いが、その時に助けてやれなかったことが悔しい、と一希は唇を噛み締める。
「でも、結果的には先生が助けてくれたから今の僕になれたんだけど。でも…僕みたいに助けてくれる先生が傍に居てくれる子ばっかじゃない。きっと…誰にも助けてもらえなくて苦しんでる子はたくさん居ると思うから…今度は僕が先生みたいに助けてあげたいんだ」
淡々と語る碧の言葉を、一希は最後まで黙って聞いてくれた。
碧が教育学部に受かるかどうかはわからないが、なんとしても自分が彼を受からせてあげたいと思う。
「大丈夫。碧ならきっと助けてあげられるよ。だって、碧自身がその辛さを知ってるんだから。でも、まずは教育学部に受かる為の学力を身につけないとな」
いくら一希が碧を応援しても、肝心の学力が足りてないと受かるどころの話じゃない。
その為にまず一希ができることは碧の成績を伸ばすことだった。
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