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第41話

「え? どうして?」 「俺は先生としてじゃなく、一人の男として見てほしいから」 そんなことを言われなくても、一希には先生だからとかいうの抜きで、一人の男として好きだ。 碧だって彼を名前で呼びたいと思ってはいるが、今までずっと『先生』と呼んでいたものを簡単には変えられない。 今さら名前で呼ぶなんて、碧には恥ずかしくてできなかった。 そんな想いを一希にぶつけると、そっと抱き締められ、碧は目を見開く。 一希の腕の中は心地いいが、心臓がうるさいぐらいに脈を打っているせいで、嬉しさに浸っている余裕はなかった。 「恥ずかしくても呼んでほしい。だって恋人なんだからさ」 「…うん」 頷いてはみたものの、いざ名前を呼ぼうとすると、顔が真っ赤になって言葉が出てこない。 たった一言「一希」と呼ぶだけなのに、変に緊張してしまう。 真っ直ぐ一希を見ることもできず、先ほど纏めた荷物の方へと目線を反らした。 いくつも積み上げられたダンボールを見つめていると、疲れのせいか、うとうとしてきてしまう。 「碧? 寝るならベッドに行こう」 「う、ん…」 既に夢の中へと入りかけている碧の体を抱き上げ、ベッドへと寝かせてやる。 今朝母親が洗濯したばかりの布団はふかふかで、碧は心地よさに包まれ、すぐにでも眠れそうだ。 「まだダメだよ」 「んぅ?」 眠りに落ちようとした碧を引き留めたのはここまで運んでくれた一希自身で、碧はうつろな目を彼に向ける。 視線が合った瞬間、目の前が真っ暗になり、唇に温かいものが当てられた。 それが一希の唇だとわかるころには、全身の力は抜け、一希のペースに巻き込まれていて、碧は彼に身を委ねる。 「ねぇ…するの?」 「嫌か?」 主語のない会話だが、二人にはそれだけで話が通じるのだから、わざわざ恥ずかしい言葉を言うまでもあるまい。 一希としては言葉にしてもいいとは思っているが、碧は当然恥ずかしがる。 これだけで通じるのであれば、わざわざ彼を羞恥に追い込むことはないと思ったのだ。 それに、これからしようとしていることの前に碧がへそを曲げてしまっては元も子もない。 故に今はあまり虐めないようにしている。 それもこのあとの楽しみのためだ。

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