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第5話
下校時刻になり、帰る準備を済ませて下駄箱を出る。
校門を抜けると、そこには先輩が立っていた。
「帰ろっか」
その一言に小さく頷く。
二人で歩き出す。
前みたいに他愛ない話をすることもなく、静かな時間だけが流れていた。
気まずいわけじゃない。
でも、どちらも何を話せばいいのか分からない。
駅に着き、ホームで電車を待つ。
夕方の風が少しだけ冷たい。
「……」
「……」
沈黙のまま並んで立っていると、突然後ろから大きな声がした。
「あれ? 成田じゃん! みっけ!」
先輩が振り返る。
「お、お前ら」
同じ色のネクタイをした先輩の友達だった。
「なになに、もう帰んの? 遊んでこうぜ。」
「今日は――」
「いいじゃん、ゲーセン寄ろうぜ!」
「おい、やめろって」
「ほら行くぞ!」
次々と話しかけられ、先輩はあっという間に友達の輪の中へ飲み込まれていく。
その様子を少しだけ眺めていると、電車がホームへ滑り込んできた。
……ちょうどいい。
俺は一人、電車へ乗り込む。
ドアのそばに立ち、何気なくホームを見る。
先輩たちはまだ笑いながら話していた。
どうやら次の電車に乗るらしい。
その時、不意に先輩と目が合った。
一瞬だけ。
本当に一瞬だけだった。
先輩が何か言おうとしたように見えた。
でも俺は、その視線から逃げるように顔を逸らした。
ドアが閉まる。
ゆっくりと電車が動き出す。
窓越しに見える先輩の姿は、少しずつ遠ざかっていった。
やっぱり。
先輩には、俺がいなくても隣で笑い合える人がいる。
そう思うと、胸の奥が少しだけ痛んだ。
でも、その痛みごと飲み込んで、俺は流れていく景色をただ眺めていた。
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