39 / 57
第39話
「さすが先輩ですね。医大なんて俺には別世界みたい」
「別世界か...。俺も昔はそう思ってたけど、入ってみたら案外そうでもないよ。で、宏太はどんな道に進みたいとか少しは考えてる?」
「興味のあることはあるんですけど...」
「けど?」
「今は生活に精一杯で、学費も払えないし...本当にその道に進みたいのか...正直、自分でもはっきりわからなくて」
きっと両親が生きていた時なら迷わずに受験を考えただろう。
あの頃は生活する苦労もお金の有り難みも何一つ知らない子供だったから。
しかし、今はそうはいかない。
自分一人じゃなく、まだ幼い弟がいるから。
はっきりとした目標がないままとりあえずで大学に行くぐらいなら、就職して少しでも家計を裕福にしたいという気持ちもあった。
「弟...まだ小さいんだったよね。確かに、俺が宏太の立場でも悩んだと思うよ。でも、今はまだ興味がある程度でも、本気で目指したいって気持ちが少しでもあるなら、多少無理してでも大学で学ぶ事は間違いじゃないと思うから」
赤瀬の言う事は理解できる。
もし将来、自分の為に進学を諦めたと知れば、信太はショックを受けることも考えていないわけではない。
大学で学んだからこそ興味から目標に変わることだってあるだろう。
宏太自身、進学したいという気持ちはあるのだ。
それがなければここまで悩んではいない。
なんの迷いもなく今頃は就職活動でもしていたはずだ。
「まぁ、悩んでるってことは少なからず本気で目指したいって気持ちもあると思うよ。そこは宏太自身が悩んで決めることだよ。俺が役に立てるとしたらその後かな?」
「先輩......ありがとうございます」
まだ進路については決められないけれど、赤瀬に話したことで少しだけ自分の気持ちに気づけたような気がした。
もし今日赤瀬に会っていなければ、宏太はずっと悩み続けていただろう。
ともだちにシェアしよう!

