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第54話

赤瀬の言葉に心からよかった、と感じながら電話を終えると、それと同時に大悟に抱き締められた。 「…大、悟?」 「これからはさ…あんまり隙見せないで」 縋るような少し弱々しい声でそう言われ、自分はどれ程大悟を傷つけたのかを思い知らされる。 同時に、これ程までに想われているという事に喜びを感じていると、ゆっくりと唇が重ねられた。 触れるだけのたった数秒のキスが、宏太にはすごく長く感じてしまう。 信太が起きてしまう前に家に帰らなければ、と思うのに、今はこのままここに居たい、と素直に思った。 「そういえば、肝心な話しないと」 「肝心な、話?」 「進路…どうするの? 何か夢とか興味のある事くらいあるでしょ?」 「うん…まぁ、ね」 少し言いにくそうにそう呟いた。 そんな宏太に、大悟は静かに次の言葉を待った。 「ちょっと…教師に興味はあるんだけどさ」 「教師か」 「なれるかわからないけどね」 「そんな事ないよ。今は興味でも、実際学べば本気で目指したいって思うかもしれないし」 「そう、かな?」 「うん。僕もそうだったから。実際に保育を学んで、それで保育士になったんだ。…そうだ。僕の行ってた大学は教師を目指す人も通ってるからさ、よかったら参考にしてみてよ。大学の見学もあるし…僕も一緒に行くからさ」 「ほんとに!? じゃあ、一緒に見学…行きたい」 そう言って頬を綻ばせれば、大悟の手が頭へと伸ばされる。 そのまま優しく撫でられ、その心地良さに進路への悩みを軽くなった気がした。

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