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木田 智之(きだ ともゆき)視点2

「あっ、……っ、もう、やめ……っ」  声に導かれるようにして覗いた冴島の寝室では、やたらとデカいベッドの真ん中で、全裸のキトの上に半裸の冴島が馬乗りになっていた。 「……何がどうしてそうなってるんだよ」  思わず呟いた俺の声に、キトが肩を揺らしてこちらを見る。  その顔は既に真っ赤だ。  ……まあ、最中に友達に覗かれたら、そりゃ恥ずかしいよな。 「おう木田、起きたのか」  一方で冴島は、新しい玩具を開ける子どものようなワクワクした顔をしている。 「見ろよこれ、キトの胸ふわっふわなんだって。しかもこれ真ん中から……」  冴島は、ふわふわの羽に覆われたキトの胸の真ん中に指を突っ込むと、下から上へと縦に割るようにして、それから両手で左右に開く。  ふわふわとした綿毛のようなダウンの下から、思うよりも広い面積で酷く薄い皮膚が顔を出す。  ピンク色でつるりとした皮膚は内臓までも透けて見えていて、外皮というには脆すぎる。  ああ、そこはキトにとって既に内側なのか……。 「ほら、ぱっくり割れてこんなピンクのつやつや肌出てくんのとかすんげーエロくね?」 「おまっ、人の肌を勝手に見せんな!」  キトが慌てて胸元に羽をかき集める。 「まあいーじゃねーか、減るもんじゃなし」  ニシシと笑う冴島の口元は、さっきからずっと緩みっぱなしだ。 「冴島、それはどう考えてもセクハラする側の台詞だぞ……」  俺はまだ酒の残る息を「はぁ」と吐いて、それからキトを改めて見る。  キトは冴島の下でベッドに押し付けられてはいるが、背中の翼もそう荒れてはいないし、周りに羽根が飛び散ったような形跡もない。  どこかが縛られているわけでも殴られたようでもなさそうだ。 「強姦されそうなら助けるつもりで来たが、邪魔をしたようなら戻って寝る。どっちだ?」  俺の言葉に、冴島ががっくりと肩を落とす。 「なあ、俺って友達を無理矢理襲うような奴だと思われてたのかよ……、普通に傷付くんだけど……?」  やたらと悲し気な冴島の言葉はひとまずスルーして、俺はキトの返事を待つ。  キトは縋るような目をして言った。 「か、帰んないでよ……」 「……それは……どっちだ?」 「む、無理矢理じゃないけどさ、このまま冴島と2人きりだとなんか変な空気になりそうだから……、木田が居てくれたら、安心する……」  恥ずかしそうに長いまつげを伏せるキトに、思わずゴクリと喉が鳴る。  いや、俺まで変な空気に飲まれそうなんだが……?  俺が居るくらいで、本当に抑止力になるのか? 「お、マジで? キト変な空気になりそうだったんだ? いーじゃん、なろうぜ、変な空気!」  冴島は嬉しそうに笑って、キトの胸のふわふわの羽毛の中へと手を沈める。 「ちょっ……っ」  キトは文句を口にしかけるも、次の瞬間には息を詰める。  あの薄い肌を冴島に直接撫でられたのだろうか。  艶々した真っ白い翼がふるりと揺れた。 「やる気満々の男がこんな事を言ってるが、引き返すなら今じゃないのか?」  俺は尋ねてキトの返事を待つが、キトは黒目がちな瞳で冴島の手の動きを追っている。 「っ、ぅ……、ぁ……。そんな、風に……っ、撫でんな……っ」 「なんで? 嫌なのか? 良さそーじゃん」 「何が良いんだよっ」 「あー……もしかしてさ、鳥族って前戯とかしねぇの?」  冴島の言葉にキトは赤い頬のままで不思議そうに瞬くだけだ。 「突っ込む物がないなら慣らす必要もないんだろうし、そんな習慣はないんじゃないか?」  俺が言えば、冴島も「なるほどなぁ」と頷く。 「じゃあなんだ、キトは全然知らねーわけか。よぉし、俺が全部教えてやるからなっ」  冴島がウキウキとした声で、さらにやる気を出す。 「な……何を!?」 「気持ちイイって感覚をだよ」 「そんなの知ってるよ!」 「いーや、お前が知ってんのは心地いいとかそういうやつだ、俺の言ってんのは性的な快感の方な」 「それってどう違うのさ」 「わかんねーだろ? だから俺が実地で教えてやるって」 「ええぇ……?」  困惑顔を浮かべるキトに、なるほどここまでもそうやって冴島に押されまくったんだな、と納得する。  いや待て、よく見れば冴島の股間は既にギンギンじゃないか。  それは男友達に向けていいもんじゃないぞ。 「おいキト、冴島は本気でお前を食う気だぞ」 「ええっ!? 人間って鳥族を食べるんだったの!?」  キトが全身の羽をブワっと膨らませて驚く。 「そうじゃない。性的な意味でな」  俺が答える合間に、冴島が「くくっ、可愛い奴……」と緩んだままの口元で呟いた。  ダメだ、冴島はもうキトがそういう対象にしか見えてないな。  というかこのままここに立ってたら、俺までキトをそういう目で見てしまいそうなんだが……? 「キト、嫌なら今すぐ言え。そうじゃないなら俺はもう戻るぞ」 「えっ、なんで? 眠いの……?」  不安そうな表情を隠す事なく向けられると、思ったよりも罪悪感を感じる。  ぶふっと吹き出した冴島は腹を抱えて笑っているが、キトは文句も言わずに必死で俺を見つめている。  どうやら俺がここからいなくなることの方が重要らしい。 「そうじゃなくて。キトが嫌じゃないなら俺は邪魔だろ?」 「邪魔じゃないよっ。木田が、いてくんなきゃ……」  俺をじっと見つめる瞳が、全力で不安を伝えてくる。  だったら断れよ。  断らないってのはあれだろ、冴島に抱かれてもいいって事なんだろ?  俺はだんだん苛立たしくなってきて、キトに背を向けた。 「こっ、怖いからっ、木田がそばにいてくれよっ!」 「……は?」  思わずもう一度キトを見る。 「なんでだよ……」と悲しげに言ったのは冴島だった。 「俺ってさ、木田には強姦野郎だと思われてて、キトにはビビられてたのか? 俺は2人の事、普通に仲良い友達だと思ってたのにな……」 「いや、普通というなら、普通仲良い友達の事は襲わないからな?」 「別に無理矢理襲ってねーじゃん、誘ってるだけだろ? 断られたらやめるしさ」 「ぼっ、僕は冴島が怖いんじゃないって、初めてのことばっかなのが怖いんだよっ!」  ブワッと羽を膨らませて文句を言うキトを、やはりでれっとした顔で冴島が眺める。 「おーおー、初体験ばっかだもんなぁ」  やたら嬉しそうだな冴島……初物好きなタイプか……。 「それで、どうして俺がいればいいんだ?」  俺が尋ねると、キトは縋るような目で俺を見つめる。 「木田がいてくれたら……、安心するから……」  甘えを滲ませた言葉に、俺の心臓が跳ねる。 「よしよし、そんじゃあ木田も一緒にやろうぜ」  冴島はキトの頭をよしよしと撫でると、俺に向かって手招きする。 「それはまさか、俺は今3Pに誘われてるのか……?」 「そゆことだな」 「さんぴーってなに?」  キトの問いに俺はキトのわかりやすい言葉で答える。 「3人で交尾をすることだ」 「ええっ!? 人間って3人でもできるの!? どうやって?」  そうやって何でも尋ねるのがよくないんだと思うぞ、キト。  案の定、冴島がよしきたとばかりに答える。 「じゃあ今から教えてやるよ、俺と木田と一緒なら交尾してもいいよな? キト」  いや待て、それはさっきよりも状況が悪化してるんじゃないか?  それなのにキトは「いいけど……痛いのはやだよ?」と答える。  は……?  いいのか!?  俺が脳内で叫んでいるうちに、冴島が優しく言った。 「おう、俺初めての子にはすげー優しくすっから、安心していーぜ。痛かったらいつでも遠慮なく言えよ」 「ん、分かった」  こくりと素直にキトが頷いた。  ……ってことは……、ここに俺も参戦することになった……んだよな……?  俺は改めて、2人が重なっているどデカいベッドを見る。  確かにこのベッドのデカさなら、3人どころか5人6人乗れそうだが……。 「そんじゃ木田はキトの背中側に回ってもらうか」  言われて、俺は急に緊張する。  何の心の準備もなかったところに、3Pだなんて、それはいきなりすぎる。 「あ、そういや木田は女性経験ってあんのか?」 「いや、ない」   見栄を張っても仕方ないので、正直に答える。  冴島はよく笑う男だが、こういったことを笑うような奴ではない。 「お、マジか! よっしゃ! じゃあ今夜は初体験が2人だな、ふへへ、優しくしてやっからな、いっぱい楽しもうなっ!」  冴島は良いことを聞いたとばかりに嬉しそうに笑って言った。 「冴島は本当に交尾が好きなんだなぁ……」  キトが苦笑混じりに言うので、俺も「本当にな」と苦笑しつつ答える。  いつもの食堂と同じ空気での会話に、俺は肩の力がふっと抜けたのを感じた。

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