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第6話 陽一サイド<契約にミツワスタッフが密着>

翌日、我々は浅田タワー9階のアニメプラス会議室にお邪魔した。 今日はミツワの広報スタッフが勉強として、達也君の契約に立ち会いたいのだそうだ。 やはり逸材をよそに託すのが残念だったらしい。 颯太はもちろん、弁護士、広報スタッフ、そして広報課長の加納さんもお出ましだ。 アニメプラスのような大規模なエンターテイメント事業となれば、将来的に50億円規模のプロジェクトになる可能性もある。 ミツワとしてもエンターテイメント分野に手を出すなら、お手本となる現場を学ばせてもらわないといけない。 吉沢君も緊張した面持ちで座っていた。 5分前、夏輝さんや桐生さん、佐伯さん、村瀬さんといったアニメプラスの主要スタッフが入室してきた。 こちらは全員直立不動だ。大勢で押しかけてしまい、少し気まずい。 「皆さんお待たせしました。……あれ? 弁護士さんもご一緒でしたか?」と夏輝さん。 俺は思わずくすりと笑ってしまった。 「なんか、広報と一緒に見学したいのだそうで」 俺の返答に、夏輝さんもつられて笑った。 「せっかくですから、どうぞ契約書をご確認ください」と桐生さんが気を使ってくれる。 「押しかけてしまってすみません」 山川弁護士も居心地が悪そうにしていたが、差し出された契約書を真剣に確認していた。 「はい、問題ありません。ありがとうございます」 夏輝さんと視線が合うと、お互いに自然と頬が緩んでしまった。 「皆さんがいらっしゃるとのことで、一応コピーも用意しましたのでご覧ください」 手渡されたコピーを、皆で目を皿のようにして見つめる。 提示された給与は月10万円。 そこから税金や保険料が引かれるが、寮は無料で光熱費もタダ、Wi-Fi完備だ。 朝食付きで、昼と夜は福利厚生の400円弁当がある。 実質的な生活水準を考えれば、 家賃や光熱費を自腹で払うとすると、16万5000円程度の給与に相当する。 家事をしなくて済む分、練習に全振りできる環境だ。 ホテル仕様で清掃もタオル交換もしてくれる。 誰が見ても破格の好待遇だった。 吉沢君も契約書に目を通している。 「吉沢さん、この契約書はうちの顧問弁護士のチェックを受けています。 何かご不明な点はありますか?」 桐生さんの貫禄は流石の一言だ。 「あ、いえ、何もありません。これでお願いします」 「では、サインと実印をこちら3枚にお願いします。 そのうちの1枚は誓約書です。主にマスコミやSNS対応、ルール違反に関する確認ですね。 それから契約期間は1年間。 この1年間で基礎を徹底し、終了後にどう売り出すかという段階になりますから、2年目からはまた別契約になります。いいですね?」 「はい、結構です。……住まいは、2年後もレジデンスにいさせてもらってもいいんでしょうか?」 「はい、もちろんです」 吉沢君は迷いなくサインし、実印を押した。 広報の田代君は、その一部始終を熱心に録画している。 どうやら今日は一日中撮り続けるらしい。 契約は10分ほどで終わり、 桐生さんから激励の言葉をかけられた吉沢君は、 誇らしげに「頑張ります!」と答えていた。 「じゃあ、これからご案内しますから、先にアニメプラスの事務所に行きましょうか? 吉沢君も一緒に見学してください。全体像が分かりますからね。あとでトレーナーや仲間にも紹介します」 夏輝さんに促され、俺たちはゾロゾロとアニメプラスの事務所へ向かった。 俺自身も初めて入る場所だ。部屋に入ると、スタッフたちが皆立ち上がって会釈をしてくれた。 「じゃ、紹介しますね」 一人一人の役割を丁寧に説明してくれる夏輝さん。 田代君は必死に録画し、山下さんは録音係として立ち回っている。 「万が一、録画が失敗した時のために」だそうだ。……(笑)えらい! ファンクラブ対応は、俺もよく知っている熱血メグちゃんだ。 彼女のアイデアにはいつも驚かされる。 これからの彼らの連携が楽しみだ。

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