7 / 53

第7話 陽一サイド<吉沢君のライバルたち>

 今日はステラビートが浅田タワーのイベントホールでダンスレッスンをしているそうで、夏輝さんが仲間とトレーナーを紹介してくれることになった。 皆でお邪魔すると、ホールの空気は圧倒的な迫力と緊張感に満ちていた。 トレーナーのみずきさんの号令が飛ぶたび、空気が震える。 おっかない……。吉沢君も、少しビビっているのではないだろうか。 「では皆さん、ちょっと集まってください」 夏輝さんの声に、メンバーたちがサーッと集合する。 吉沢君がその前に出た。 「今日から皆さんの仲間になります、吉沢達也君です。 レジデンスに住む予定です。皆さん、仲良くしてあげてくださいね」 「吉沢達也です、どうぞよろしくお願いします」 彼は深く、丁寧にお辞儀をした。 皆がパチパチと拍手をしてくれたが、皆の瞳は鋭かった。 同じステージを目指すライバルとして、彼の実力を測ろうとする熱量を感じる。 「吉沢君は明日から練習に参加します。皆さん、よろしくお願いします」 夏輝さんがそう告げ、私たちはその場を後にした。 「あとは事務所に戻り、明日からのスケジュールやタイムカード、有給休暇などについて説明があります。皆さんもいらっしゃいますか?」 広報スタッフたちが顔を見合わせた後、 「はい、お邪魔かと思いますが、ぜひご一緒させていただけますか?」と食いついた。 彼らもプロの現場を少しでも吸収したいのだろう。熱心なことだ。 夏輝さんも多忙を極めているはずだ。 これ以上甘えるわけにはいかないと思い、俺は山川弁護士を連れてここで失礼することにした。 「今日は一日、有意義な勉強をさせていただきました。本当にありがとうございました」 丸一日、貴重な時間を割いてくれた彼のご厚意に感謝し、浅田タワーを後にした。 帰り道、山川弁護士にふと尋ねてみた。 「どうでしたか?」 彼はふっと苦笑いを浮かべた。 「いやあ……あれはねえ。50億じゃ絶対足りませんよ。 レジデンスの買い上げだけでも何十億の規模です。 全部を入れると軽く百億は投じているでしょう。 しかも、あの菜の花病院の発展ぶりですよ。あそこまで浅田工業が……。 もう、恐ろしくてこれ以上の詳細は聞けませんな」 私も思わず苦笑した。 「全く、何が彼らをこれほどまでに発展させたんでしょうねえ」 「やっぱり人じゃないですかね? 素晴らしい才能に恵まれたというか、良い人を引き寄せたというか。 そういう全体的な強運も持っているんでしょうな」 本当にその通りだ。 知れば知るほど、ミツワとの距離が遠のいていくような不思議な感覚がある。 最後まで見学に残った広報スタッフたちが、どんな報告を持ち帰るのか。 楽しみのような、少し怖いような気もするが……、まあ、無謀な真似はしないだろうと信じている。 それにしても、意外だったのは颯太だ。 てっきり一緒に帰るものだと思っていたのに、スタッフたちと残って最後まで見学するという。 へえ……なんか、火が付いたのかな。 面白い。後でじっくりと話を聞いてみるとしよう。

ともだちにシェアしよう!