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第10話 達也サイド<自由な練習スタジオ>
夕べ練習した振りは、すべて頭に叩き込んだ。
今日は音楽だけを聴いて、身体を音に委ねて踊ろう。
図々しいかもしれないが、スマホスタンドを使って録画もすることにした。
昨日、リーダーのゲンさんが、
「前の中央にセットしろ」と言ってくれたおかげだ。
本当にありがたい。
必死に覚えた振りを音に合わせていく。
すると、急に身体が羽のように軽くなった気がした。
二時間のレッスンが終わると、ゲンさんが近づいてきた。
「おい、今日の録画を見せろよ」
スマホを渡すと、彼はサッと画面を確認し、
「へえ……一日でここまで良くなるか。やるじゃん」
と褒めてくれた。
「ありがとうございます! 録画のおかげです」
俺は思わず最敬礼していた。
戻ると、今度はリョウさんが「俺にも見せろよ」と声をかけてきた。
「はい、どうぞ」
スマホをじっと見つめたあと、彼は「……すげえじゃん」と短く返してくれた。
「ありがとうございます」
そう答えたが、リョウさんの表情はどこか複雑だった。
いつもとは何かが違う。
一体、何を考えているんだろう。
昼食を挟んで、午後はボーカルレッスン。
昨日とは違う楽譜が配られた。
繊細な歌詞が綴られており、なんだか今の自分の気持ちと重なる気がした。
皆が歌い終わり、最後に俺の番がくる。
感情を込めて歌い上げると、トレーナーが「いいじゃん」と頷いてくれた。
胸が熱くなったが、その感動は心の中にそっとしまった。
もちろん、歌声もしっかり録画した。
レッスン後、トレーナーに呼び止められた。
「駅前のスタジオはIDカードで入れる。24時間、自由に使っていい。
個室もあるし、上にはダンススタジオもある。
すべて防音よ。許可はいらないから、好きな時に練習しなさい。
ただし、ダンス教室もやってるから、その予約時間だけは注意してね」
「はい、ありがとうございます!」
その夜、さっそく見に行った。
個室からは楽器の音が漏れてくる。空いている小部屋を覗くと、ピアノがあった。
弾いてみる。
今日もらった楽譜の旋律を思い出して、弾きながら歌ってみた。
最高だ。誰にも気兼ねせず、全力で練習できる。
24時間使えるなんて、この会社は神かと思った。
一時間ほどして、上のダンススタジオへ向かった。誰もいない。
喜び勇んでスマホの録画を流し、音を頼りに踊り始めた。
ああ、やりたい放題だ。凄すぎる。
「この会社、大好きだー!」
思わず叫ぶと、広々としたスタジオに声が響いた。
その晩は興奮のあまり、なかなか寝付けなかった。
うれしくて、たまらない。
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