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第12話 達也サイド<夕食会>
颯太さんからメールをいただいた。
「今度の土曜日に生家で夕食会をするから、良かったら来てください。
来れるなら迎えに行きます」
うわ~うれしい。
生家ってどんなところなんだろう。すごく楽しみだ。
当日、駅で待っていると、黒塗りの車が二台も並んでやってきた。
すごい……。まるで政府の要人みたいだ。
颯太さんが窓から顔を出し、「先導車に乗ってね」と声をかけてくれた。
颯太さんは先生と一緒に二台目の後ろの席に座っており、
先生がこちらに軽く手を振ってくれた。
幸せそうな二人を見ていると、なんだかこちらまで温かい気持ちになる。
港区の高台にある生家に着いて、言葉を失った。
広大で、SPまで控えている。
別世界すぎて居場所がないような緊張感を覚えた。
家の中に入ると、執事の小林さんや、四人の家政婦さんたちが出迎えてくれた。
中には青年と、可愛らしい女の子もいた。
「初めまして。佐倉里奈です。
高校一年で、こちらでお世話になっています。よろしくお願いします」
「初めまして。藤沢碧人です。
大学一年です。俺もこちらでお世話になっています。よろしくお願いします」
「初めまして。吉沢達也です。
十九歳の歌手の卵です。どうぞよろしくお願いします」
二人はどういう関係なんだろうと思っていると、
先生がすかさず説明してくれた。
「この二人は事情があって、こちらで預かって暮らしているんだよ」
「はい、そうなんですね」
すると、颯太さんが優しい眼差しで言ってくれた。
「達也君も万が一の時には、うちで同じように預かるから安心してね」
「はい……本当にありがとうございます。感謝します」
正直、一瞬、颯太さんに抱きつきたいくらいうれしかった。
「さあさ、お夕食の準備ができていますよ。お席についてくださいね」
家政婦の由紀さんに促され、席に着く。
テーブルの上にはすき焼きがセットされていた。
すき焼きなんて、もう何年も食べていない。
「先に乾杯しましょうか?」
先生の言葉に、俺はジンジャーエールを掲げた。
「では、吉沢達也君、ようこそ。
皆さんも今夜は楽しみましょう。かんぱーい!」
並んだ前菜はどれも美しく、感動的な美味しさだった。
由紀さんが煮えた牛肉をどんどん器に入れてくれる。
口の中でとろけるような牛肉に、
思わず「うますぎる……」と漏らすと、皆がくすくすと笑った。
「あのう、吉沢さんは歌手の卵って、どこで活動してるんですか?」
里奈ちゃんが笑顔で聞いてくれた。
「颯太さんにご紹介いただいて、アニメプラスという事務所に入ったんです。
まだ研修生ですけど、毎日ボーカルやダンスのレッスンを受けています」
「この前、夏(なつ)さんに偶然会ったら、
吉沢君のことを頑張っているって言ってたよ」
先生の言葉に驚く。
「え、そうなんですか? お気遣いいただいて本当にありがとうございます」
「それとねえ、もしかしたら、これからちょっと良いことがあるかもしれないよ」
颯太さんから意味深なことを言われた。
なんだろう……。よく分からず、俺は曖昧に笑うことしかできなかった。
その夜、碧人さんや里奈ちゃんと語り合った。
彼らは立花家の社会事業である<ミツワ未来財団>の話をしていた。
何もかもが凄くて、圧倒される。
俺は密かに、自分の境遇に思いを馳せた。
こんなにも世界は違う。
だが里奈ちゃんの話を聞くと、彼女も俺以上に苦労してきたようだった。
通信制の高校に通いながら、ここで預かってもらっている十六歳。
すごいな。俺より大変な環境にいる子たちを、颯太さんや先生は支えているんだ。
早く一人前にならないといけない。
そう強く誓った。
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