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第14話 達也サイド<隔離>
月曜日、朝一で夏さんに「会議室に来て」と言われた。
……俺、何かやらかした?
胸がざわついて、足が重くなる。
会議室のドアの前で、心臓がどくどく鳴っていた。
中に入ると、夏さん、桐生社長、見知らぬ男性、
そして事務所スタッフが数人。
まるで“裁判”みたいな空気だった。
俺……クビになるのか?
視界が暗くなって、手足が震えた。
「達也君、おはよう。びっくりしちゃったよね?」と夏さん。
「はい……」
「でもね、今日はもっとすごい話だよ」
夏さんの声は優しいのに、胸の鼓動は止まらなかった。
桐生社長が続けた。
「颯太さんが新曲のMVを出すんだけど、
そのイメージカットに君を推薦してくれたんだ。
本来なら入所1か月で表に出すのは早すぎる。
でも、こういうチャンスは滅多にない。
事務所としても、もう“出す”と決めたよ」
「……え?」
「君の出演が、プロデビューの第一歩になる」と夏さん。
「プロ……? 俺、まだ何も……」
言葉が喉でつかえた。
「そう。まだ早い。でも、波が来たら乗るしかない。
だから今日から環境を変えます。
まず、ステラビートとの接触は禁止。
そして別の住まいを用意したので、
2時間以内に引っ越ししてもらいます」と桐生さん。
「え……?」
頭が追いつかない。
世界が急に動き出して、俺だけ取り残されているみたいだった。
「紹介するよ。君の専属マネージャー、佐々木和明さんだ」
桐生社長が隣の男性を示した。
「今日から君を全面的にサポートします。よろしくね」と佐々木さん。
「よ、よろしくお願いします……」
「では続きは移動しながら。佐々木さん、お願いします」
「達也君、行こうか」
促されて立ち上がると、
夏さんが微笑んでくれた。
「達也君、頑張ってね」
その一言で、張りつめていたものが全部崩れた。
クビになると思っていた恐怖が一気に溶けて、
涙がぽろぽろこぼれた。
嗚咽が止まらなかった。
佐々木さんがそっと背中をさすってくれた。
「大丈夫。急ごう。
ステラのメンバーが戻る前に退去しないといけないからね。
私も手伝うよ」
「……はい」
タワーから車で移動し、レジデンスに戻ると、
俺はスーツケースに荷物を詰め込んだ。
でも入りきらない。
佐々木さんが台車と段ボールを持ってきてくれた。
「この箱にどんどん入れて。冷蔵庫の中も全部持って行こう」
「はい」
冷蔵庫、浴室、棚の小物……
二人で無言で詰め込んだ。
気づけば、30分も経たずに部屋は空っぽになっていた。
「行こう。鍵は私が預かるね」
1階の駐車場には黒いバンが停まっていた。
窓はすべてスモーク。
中が見えない。
「荷物はここへ。君は助手席へ。
私はフロントに鍵を返してくるから」
「……はい」
荷物を積み終え、助手席に座った。
エンジンの振動が胸に響く。
これから何が始まるんだろう。
俺には、まったく想像がつかなかった。
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