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第17話 達也サイド<デビュー曲の練習>

 「デビュー曲が決まったから、明日は浅田のきらら小ホールで、朝一から舞台で聴かせてほしいそうよ。なんか事務所総出で来るんだってよ。さあ、大変だ~」と三角先生が楽しそうに言った。 「アニメプラスは本当に恵まれてるよね。ホールが使いたい放題だもんな。 じゃあ、せっかく舞台に上がるなら、ちょっと振りを付けようか?」と広野先生。 「ああ、いいねえ。ぜひお願いしますよ」と三角先生。 「よし、じゃあやるよ。ピアノお願い」 前奏が始まると、先生がゆるい動きを入れてくれた。 前奏が終わるとストップ。 「はい、ここまで。やってみて」 また前奏が流れ、俺は真似して踊った。 「お、いいねえ。はい、次は歌い出すよ。通してやってみよう」 前奏で踊り、1番から歌い出した。 「ストップ」 「歌ってる時なんだけどね、手や身体を使って“伝える”と良いんだよ。 この曲は最後に向かって盛り上がる曲だから、最初は小さくね。一緒にやろうか?」 ピアノが始まる。 先生と二人で前奏の振り。 1番を歌うと、先生が少しずつ振りを入れていく。 俺はそれを真似しながら歌った。 1番のサビに入ると、振りが大きくなる。 「よしよし、その調子。 で、間奏は“踊りで魅せる”ところだよ」 間奏では、中心を少し下がって、振りを大きめに踊る。 次は2番。 「今度は少し振りを変えるよ。歌詞の心情に合わせるんだ」 2番が終わり、短い間奏。 「ここだよ。大きめに踊って観客を引き込むんだ。 でも見せすぎると3番に入りにくくなるからね」 また振りを真似しながら歌う。 3番だ。 「最後は“光に向かっていく”感じ。 表情も、希望を見つけたように変わっていくんだよ」 言われた通りに、3番を“最後の一撃”のつもりで歌い切った。 パチパチと三角先生が拍手してくれた。 照れた。 「ほう~、だいぶ良くなったね。ちょっと録画して、今夜中に完璧に踊れるようにしよう。 明日は舞台だからね。観客がいるつもりで集中しないと駄目だよ」 三角先生が励ましてくれた。 スマホで録画をセットして、何回も繰り返し練習した。 気がつけば、もう2時間が経っていた。 「はい、では今日はここまでにしましょう。明日は頑張ってね」と三角先生。 「はい、ありがとうございました」 「うん、中々良くなったよ。明日は頑張れ~」と広野先生。 その日のスケジュールはそこで終わり。 「じゃあ達也君、今日はこれで終わりだから、明日は8時20分に迎えに行くよ。 朝は柔軟体操と、喉の吸入で手入れしておいてね」と佐々木さん。 あっと思った。 「ん?吸入器、持ってないとか?」 「はい、すみません……持ってないです」 「じゃああとで買って届けるよ。 お昼ご飯、スーパー寄る?」 「はい、行きたいです」 「じゃあ途中で寄ろう」 買い物を終えて帰宅すると、1時間ほどで吸入器を届けてくれた。 ありがたい。説明書を読んで、すぐに試した。 どれくらい効果があるんだろう? 明日の朝食はしょっぱいものは駄目だな。 あ、喉が渇くお茶も駄目だ。 何を飲めばいいんだろう?ネットで調べた。 駄目なものは、カフェイン、柑橘ジュース、炭酸、冷たい飲み物、ウーロン茶、緑茶。 へえ~。 良いものは、麦茶、黒豆茶、ルイボスティー。 はちみつ大根湯、はちみつレモンのお湯割り。 わ~、これは飲み物持参じゃないと駄目だな。 それか、ただの水か。難しい。 明日の朝はパンを焼く予定だったけど、 トーストで喉がガサッとしたら困るから、 固めのお粥に卵を落として食べることにした。 手間がかかる。 寝る時はマスクか……。 ああ、でも明日の舞台は全力で頑張ろう。 朝6時に起きて、振りの練習もしよう。 それより、何を着ていけばいいんだろう? どうしよう……。 マネージャーさんに電話した。 「はい、達也君、どうしたの?」 「明日なんですけど、洋服は何を着ればいいんでしょうか? 俺、ロクな服がなくて……」 「ああ、それね、大丈夫。 スタイリストさんがなんか服を用意してくれるよ」 「はい、分かりました。ありがとうございました」 ふう……そうなんだ。

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