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第18話 ゲンサイド<ステラビートの衝撃>
ダンストレーナーから、達也が体調不良でしばらく休むと聞いた。
「はい。分かりました」
内心あきれた。あれくらいの練習で弱るか?
三日もすれば戻るかと思っていた。
だが来ない……おかしい。
普通、三日も休んだらトレーナーが「もうすぐ出るよ」とか、
「熱は下がったらしい」とか、「入院した」とか言うはずだ。
それなのに、トレーナーは平然としている。
この事態を当然のことと言わんばかりだ。
練習が終わるとトレーナーが帰った。
「みんな、ちょっと集まれ」
皆がサッと集まった。
「誰か、達也の部屋を知ってるか?」
「はい、俺知ってます」リョウが名乗り出た。
「よし、ちょっと様子を見て来い……、
ああ、いや、レジデンスまで三十分かかるから、フロントに電話して状況を聞いてみろ」
「はい、分かりました」
リョウはすぐその場で電話をかけた。
そして話をして、すぐ電話を切ると、呆然と立ち尽くしていた。
「早く言え! なんと言ってるんだ?」
「……それが、もう部屋にいないそうです。チェックアウトしたと……」
思わず座り込んだ。
愕然とした……。
この衝撃をどう受け入れていいのか分からなかった。
「あのう、達也は逃げ帰ったんですかね?」
リョウの問いに、俺は苛立ちを隠さず言い放った。
「お前はバカか! 考えてみろ。
わざわざ一か月で逃げる必要なんてあるかよ」
リョウはシュンと俯いた。
他のやつはどう思ったんだろう?
「おい、あいつの最初のオーディションに行ったやつ、手を挙げろ」
六人が手を挙げた。
「あの時、達也を見てどう思った? 一人ずつ正直に言ってみろ」
シュン「嫌な奴が来たと思いました。
俺たちはプロとして何年も積み上げてきたのに、初回から最後まで一緒に踊り切るなんて……。
どっかのプロから引き抜かれたら踊れるだろうけど、素人だからオーディションをしたんですよね?
歌もダンスも……俺たちにないものを持っていて、適わないと思いました」
タク「ダンスは素人っぽかったけど、最後までの踊り切り方は異常でした。
あの夜は悔しくてモヤモヤしました」
ナオ「ダンスは俺の方が上だと思いたかった。
でも、あの声は天性のものですよ。逆立ちしたって敵わない。すげえ奴が来たと思いました」
ショータ「皆と同じです。ただ、ミツワの広報や立花先生まで来ていて、バックの大きさに圧倒されました。
颯太さんのような有名歌手に、紹介してもらえるような奴なのか、何者なんだと」
ゴウ「練習が遅れてたのに、一晩でスマホ録画で完コピして合わせたのは衝撃でした。
譜面も初見で完璧。最後のアレ、正直デビュー曲レベルでしたよね?
悔しくて誰にも言わなかったけど、完敗でした」
リョウ「……負けたくなかったんです。
俺だって努力して今の地位があるのに、あいつは最初から完成されていた。
納得いかなかった」
俺は深く溜息をつき、皆を見渡した。
「……ああ、同感だ。俺も同じことを思った。
あのポテンシャルと根性、声の天賦の才。認めざるを得なかった」
俺は少し間を置いて、確信を持って告げた。
「一か月で姿を消したということは、恐らくどこかで隔離され、別メニューで仕上げられているんだ。
颯太さんも来ていたことだし、デビューが確定したんだろう」
皆が一斉にどよめいた。
「驚くよな。……最初からデビューが決まっていたなら、俺たちと競わせる必要なんてなかったはずだ。
恐らく颯太さん側から急なオファーがあって、慌てて隠したんだろうよ」
「なら、なぜわざわざ俺たちと?」ナオが問う。
「事務所に上手く使われたんだよ。
俺たちの競争心を煽って、あいつを鍛えようとしたんだろうな」
俺は苦々しく笑った。
「じゃあ、俺たちはこれからどうすれば……」とショータが不安げに呟く。
「悔しいのは皆同じだ。だがな、事務所は俺たちが邪魔をするとでも思っているらしい。
だから皆に命じる。今度どこかで会ったら、意地でも『頑張れ』と声をかけてやれ」
俺は皆の顔を一人ずつ見据えた。
「余計なことは言うな。絶対に手を出すな。
それが俺たちの、せめてもの意地だ。いいな!」
「はい、分かりました!」
10人の声が、力強く揃った。
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