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第20話 達也サイド<デビュー祝いの夕食会>
「デビューおめでとう!!」
声を揃えての乾杯。
グラスがカチッと鳴り、照明を反射してきらりと光った。
「ありがとうございます」
またこの颯太さんの生家に来られたことが、何よりも嬉しい。
食卓に並ぶご馳走と、みんなの祝福がくすぐったい。
「達也さん、颯太さんから頂いた動画を見たんだけど、すごかった!」と里奈ちゃんが褒めてくれる。
「いや~、別人かと思ったよ。なんでそんな短期間でスターみたいになっちゃったの?」
碧人君の言葉に、思わず照れてしまう。
「多分、きっかけは颯太さんのお誘いなんだと思います。翌朝にはもう引っ越しでしたから」
「え、そうだったの? なんでそんな急に?」と颯太さん。
「……それは、ちょっと言いにくいんですよね」
「颯太、あとで教えてあげるよ」と先生が助け舟を出してくれた。
先生の眼差しが温かい。
「たまたま、新しいボーカルレッスンであの曲を歌ったら、すごく気持ちが乗ったんです。
そしたら先生が事務所に話してくれて、それがデビュー曲になったんですよ」
「へえ~。マジでステージの達也君、カッコよかったもんな」と先生。
「そうそう。もう驚きすぎて、ずっと口をポカーンと開けたままだったって、先生に言われちゃったよ」と颯太さんが笑う。
みんなもつられてくすくすと笑った。
今夜の献立は焼肉だ。
すき焼きに続いて、ご馳走ばかりで胸がいっぱいになる。
里奈ちゃんがせっせとお肉を焼いてくれる。
「里奈ちゃん、自分は食べなくていいの?」と碧人君が冷やかす。
「いいの。放っておいて」
「じゃあ、次は俺が里奈ちゃんに焼いてあげるね」
そう言うと、里奈ちゃんの手がピタッと止まり、俺を嬉しそうに見つめてきた。
その期待を裏切るわけにはいかない。
せっせと焼いてお皿に乗せてあげた。
そんなことをしていたら、あっという間にお腹いっぱいになってしまった。
「今日はね、里奈ちゃんが達也さんにお祝いのタルトを作ったのよ。
ブラックチェリーをたっぷり入れたんだから」と由紀さん。
「えへへ、そうなの。初めてタルトを作ったんだけど、どうかな? 早く食べてほしくて」
タルトになぜかろうそくが3本。
「じゃあ、里奈ちゃんも一緒に吹き消してくれる?」
照れまくる里奈ちゃんと一緒に、「せーの、ふーっ!」と息を吹きかける。
「イエ~イ!」という碧人君たちの拍手が響いた。
「はいはい、達也君がシャーベットも持ってきてくれたのよ」と良子さん。
柚子とリンゴのシャーベット。
青いガラスの器に半分ずつ盛られている。
タルトもシャーベットも最高だった。
「里奈ちゃん、タルトがすごく美味しいよ。上手だね」
そう伝えると、里奈ちゃんは照れて俯いてしまった。
その表情がたまらなく愛らしい。
食後はみんなで色々と言葉を交わした。
「今、どんなところに住んでるの?」と颯太さん。
「え、えっと……1DKのマンションなんですけど、すみません、場所は内緒にするように言われていて……」
「そうなんだ。タレントって厳しいんだねえ」と先生。
「じゃあ、ほぼ私生活は内緒ってこと?」と碧人君。
苦笑いで頷くしかない。
「うわ、それちょっと苦しいね」
「うーん。俺はまだそこまでではないんですけど、
一人で外出してはいけない決まりになっているんですよ」
ふふっと小林さんが笑う。
「乳母日傘(おんばひがさ)って言うのかな?」
「ええ?」とみんなが驚くと、家政婦さんたちはクスクスと笑っていた。
語り合っているうちに、あっという間にアラームが鳴る。
「すみません、マネージャーが迎えに来ていると思うので、俺はこの辺で失礼します。
本当にありがとうございました。ご馳走様でした。また寄せてください」
名残惜しそうにするみんなに申し訳なさを感じながら、玄関へ向かう。
外にはマネージャーの車が停まっていた。
玄関の外まで見送ってくれるみんなの姿を見ながら、
温かくて、どこか切ない夜だったなと思う。
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