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第22話 夏輝サイド<CM打ち合わせ>
本社に伺ったその日の夕方、
さっそく広告代理店「アークス・エージェンシー」から連絡があった。
翌日には打ち合わせをしたいという。
桐生さん曰く、こういう契約には決めることが山ほどあるらしい。
わあ、聞いただけでも細かすぎて面倒くさい。
ここは桐生さんを筆頭に、村瀬、佐伯、藤堂さんも交えた「契約に強い4人」に任せることにした。
そして翌日、
代理店の方々が会議室に入ってきた。
5名ほどだろうか。
そのうちの一人が、えらくにこにことこちらを見ていた。
うん?
「初めまして、アニメプラスの理事、浅田夏輝です。
わざわざお越しいただいて申し訳ありません。
今後ともどうぞよろしくお願いします」
丁寧に頭を下げると、にこやかな男性が応じた。
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。
有名な歌手である夏輝さんにお会いできるのは光栄です。
楽しみにしていました」
次の瞬間、その男性がさっと視線を動かし、桐生さんと目が合った。
「桐生さん、お久しぶりですね。お元気でしたか?」
二人は自然な動作で、しっかりと握手を交わした。
あれ?知り合いなの?
思わず桐生さんを見ると、彼は苦笑いした。
「理事、こちらは前のゲーム会社にいた時に、
しょっちゅうお世話になった部長の柳瀬さんです」
「あ、そうなんですか。それはすごい縁ですね!」
「はい。私は辞められたと聞いていましたが、
絶対いつかお会いすると確信していましたよ」
柳瀬さんの言葉に、桐生さんが少し照れくさそうにしている。
なんとも微笑ましい。
改めて双方のスタッフが紹介された。
「まさか、アーティストのCMでお会いするとは思いませんでした。
会うなら絶対ゲームだと思っていたんですよ。
今日は本当に偶然ですね、今後が楽しみです」
柳瀬さんの言葉に和みつつ、
こちらの吉沢達也のプロフィールとデモ音源を用意する。
「今度出演させていただく歌手は、まだデビュー前なんですよ。
動画などご覧になりましたか?」と俺が尋ねると、柳瀬部長は目を細めた。
「はい、しっかりと拝見しました。
中々雰囲気がある青年で、顔がすごくいい。
歌もドラマティックで、車のCMには適した人材だと思いました。
副社長も中々目が高いですよ」
「それでは早速すり合わせをしましょうか?」
桐生さんの合図で、会議は一気に仕事の顔になった。
項目別に、50以上もの条件を次々とすり合わせていく。
桐生さんは事前にチェックすべき内容を完璧に揃えていた。
すごいねえ。
向こうも営業プロデューサー、クリエイティブ・ディレクター、
製作担当マネージャーと、そうそうたる面々を揃えてきただけあって話が早い。
「ところで、タレントの拘束期間ですが、
ご希望はありますか?」と製作マネージャーが尋ねる。
「いえ、今はレッスン以外の予定はないので、
その辺は自由に決めてもらってかまいません」と桐生さん。
「でしたら、外部の郊外スタジオと都市部で撮影をしますので、
約1週間ほどお時間をいただいてもいいですか?
天候の兼ね合いもありますので」
「はい、結構です」
淡々と進む中、俺の最大の関心事は達也の契約金だった。
「契約金ですが、副社長の意向もありまして、300万でいかがでしょうか?」
え? 一瞬、会議室の空気が固まった。
「ありがとうございます。ありがたいですね。
達也はこれを機会にMVも出しますし、どんどん飛躍すると思います。
ぜひ、続編があればその時は大幅UPでお願いしたいですね」
桐生さんは涼しい顔でそう返した。
強気!! ふんだくり過ぎじゃないか?
俺は思わず冷や汗をかいた……。
その後も楽曲の権利関係を丁寧に詰め、
こちらの権利もしっかりと守られた。
恐るべし、桐生……。
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