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第23話 夏輝サイド<CMロケとステラに光を!>
CMのロケは俺にとって初めてのことだった。
現場の空気感、スタッフの動き、すべてが勉強になるはずだ。
天候の兼ね合いを見て、最初の二日間は曇りだったこともあり、郊外の大きな撮影スタジオでロケを行うことになった。
黒いピカピカのレクタスの新車が、工場から搬入されている。
なんというスタッフの数だろう。
ざっと見回すだけでも60人以上はいる。
達也は佐々木マネージャーのそばで、
何が始まるのかと緊張でガチガチになっていた。
メイクや衣装はすべて整っている。
製作ディレクターが台の上から指示を飛ばす。
カメラを載せたクレーンが自由自在に動き回り、
大きな風を送る巨大な扇風機まで回っている。
たった一つのCMにこれだけの人と予算を動かすのか。
プロの現場のスケールに、圧倒されずにはいられなかった。
撮影が始まると、達也はディレクターの指示に従い、車と一緒にあらゆるアングルで撮られていく。
その時、背後からぽんと肩を叩かれた。
驚いて振り向くと、そこには微笑みを浮かべた副社長がいた。
「お疲れ様です」
副社長は控えめにそう挨拶をした。
「……なんだか大変な作業になっていますね。
達也は大丈夫でしょうか? 初めてなんですよね」
気弱な俺の言葉に、彼は短く言い切った。
「誰でも最初はありますよ。でも彼は、やり遂げます」
何の根拠があって?
不思議に思いつつも、副社長が達也に向ける眼差しが、あまりに温かいことに気がついた。
なんだろう?
俺よりもずっと、達也のことを深く見ている気がする。
そう感じているうちに、
彼はまたそっとその場から姿を消した。
撮影は約一週間で幕を閉じた。
その間、副社長からは何度もスタッフへの差し入れが届いた。
後日、礼状を出す手配をしておく。
達也には二日間の休みを与えた。
緊張しっぱなしだったようだが、最後まで見事にやり遂げた。
今頃、泥のように眠っているだろうか。
一方、事務所では朝一のミーティングが開かれていた。
「まず、ステラの今後から始めましょうか」
桐生さんの号令に、いつもは控えめなメグちゃんが珍しく手を挙げた。
「あの……ステラは最近あまり外に出られてなくて、勿体ないと思うんです。
問い合わせでも『次の予定はどこですか?』って聞かれることが多くて。
もっと出演機会を増やしてあげたいんです」
メグちゃんは続ける。
「それと……ファンの実感が湧かないなら、一度ファンミーティングをしたらどうでしょうか?
きっと熱烈なファンがいるはずだし、皆も元気になると思うんです」
俺は苦笑した。
「そうだよね……やっぱり元気がないように見える?」
「そりゃそうですよ。たった一か月で達也さんがデビューして、皆、どれだけ傷ついたか。
自信を失くしているので、イベントでもいいから、ライトを浴びる機会を作ってあげてほしいんです」
俺は隣に座る桐生さんを見た。
「そうだね。数年頑張ってきた彼らだから、
思い切って新しいことを始めようか」
桐生さんの言葉に、メグちゃんが再び手を挙げた。
「あの、他にも考えがあるんです。
今のステラはボーカルのバランスが少し弱い気がします。
誰か『歌姫』を一人追加したらどうでしょうか?
それだけでステージの映え方が劇的に変わるはずです。
ダンスはあれだけ凄いんだから、
歌の核になる人を一人入れれば完成すると思うんです!」
その直球の意見に、周囲がくすくすと笑った。
「お手上げだ。メグちゃん、君は立派な戦略家だよ」と藤堂さん。
「全く同感だ。歌姫一人でグループが完成するかもしれない」と村瀬さん。
「メグちゃんの案に賛成! という人は挙手!」という桐生さんの合図で、全員の手が挙がった。
「私、まだ案があるんです!」
メグちゃんは止まらない。
「その歌姫を、ネットで公募したらどうでしょう?
コンテストを開催して、賞金を100万ほど出して。
それをTV局に売り込むんです。
最初から密着取材に入ってもらえば、全員が有名になれる。
最高の宣伝になると思いませんか?」
会議室が拍手で包まれた。
「参ったねえ」と藤堂さんが笑う。
桐生さんも楽しげに頭をかいていた。
「では、早速企画案を練ってTV局へ持ち込もう。
番組編成に入るには最低でも半年は必要だ。
もし密着が叶うなら、審査員にはステラビートのメンバーにも加わってもらおう」
また笑顔と拍手が送られた。
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