25 / 53
第25話 夏輝サイド<ステラに発表>
今日は珍しくメグちゃんを連れて、イベントホールへ向かった。
もうダンスレッスンが終わる頃だ。
メグちゃんは、菜の花病院の看護師だったところを、
語学力に惚れ込んでスカウトした人材だ。
英語、中国語、韓国語を完璧に操る彼女は、
10代からバリバリのアイドルオタク。
ファンクラブ担当として、
今や誰も彼女のアイデアと「勘」には勝てない。
彼女は今日、どこかウキウキと嬉しそうだ。
ホールに着くと、ちょうどレッスンが終わったところだった。
「あれ? 夏さん、何か御用ですか?」
ダンストレーナーのみずきさんが尋ねてくる。
俺は横に立つメグちゃんをつついた。
「では発表します。まず、ステラビートのファンミーティングを開催します!」
メグちゃんの宣言に、メンバーたちはあっけにとられていた。
「みんな、聞いてる?」
俺が声をかけると、リーダーのゲンが戸惑ったように尋ねてきた。
「なんでまた、今なんですか?」
メグちゃんが再び俺の視線を受けて、一歩前に出た。
「あの、ファンクラブを担当していると、
毎日ものすごい数のスケジュールの問い合わせが来るんです。
皆さんを待っているファンがこれだけいるんだから、
直接交流する機会を作った方がいいと思ったんです」
「え、ファンミーティング……?
やったことがないので、何をすればいいのか全く分からなくて」
メンバーが困惑しているのを見て、俺が説明を補足した。
「場所は、うちのきらら小ホールか、このイベントホールのどちらかにする。
希望者数を見てから決めるから、まずはネットで募集をかけよう。
内容は皆で自由に考えてほしい。来月の第一日曜日、14時からにします」
メグちゃんが手渡した用紙を、ゲンたちが神妙な面持ちで覗き込む。
そこにはファンからの熱いメッセージや問い合わせがまとめられていた。
「それともう一つ、重大な発表があります」
俺にみんなの視線が集まる。
「コンテストを開催して、『歌姫』を募集します。優勝賞金は100万円。開催は半年後です」
メンバーが再び、目を丸くして固まった。
「半年間、テレビ局の密着取材がずっと入ります。
もちろん、皆さんのレッスン風景も撮影されます。
優勝者はステラビートの正式メンバーとなり、
これからの活動を共にすることになります。
新曲も用意していますし、
最終審査には皆さんも審査員として参加してください。以上です」
静まり返るホール。
それを破ったのは、みずきさんだった。
「私は大賛成よ」
彼女はメンバーを見回し、力強く言った。
「みんなはダンスのプロとして何年もやってきたわ。
でも歌っていうのは、ただ技術的に歌えるだけじゃダメなの。
天性の資質というものがどうしても必要になる。
そこに強力な『歌姫』が入れば、相乗効果でみんなの表現力も爆発的に伸びるわ。それは間違いない」
皆が真剣な表情で聞き入っている。
「今、ステラのために森戸由貴さんと木内真亜子さんに新曲を依頼しています。
楽しみにしていてください。
コンテストまでの半年間は、ファンミーティングで皆さんの魅力をファンに直接届けて、
絆を深めておいてください」
ゲンさんが代表して一歩前に出た。
その表情には、迷いが消えていた。
「夏さん、みずきさん、メグさん。本当にありがとうございます。……頑張ります」
力強い決意が込められた言葉だった。
「うん、これからもっともっと輝いていこう」
ともだちにシェアしよう!

