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第29話 夏輝サイド<爆弾>1
昨日、達也が体調を崩したことで、今日は休ませている。
「達也はCMの撮影で疲れたんでしょうか?」と桐生さん。
「身体自体はダンスで鍛えてるから、
体力はあるはずなんだけど……精神的なものじゃないの?
それともヘリが怖かったのかな?」と俺。
「あ、それあるかも」
クスリと二人で笑った。
桐生さんはパソコンに向かっていた。
「あれ? 理事、副社長からメールが来てますよ」
「ええ~、何事だよ。もうこわいよ」
メールを転送してもらうと、
『個人的なことで相談があるので、時間をいただけないか?』だって。
……どういうことだ?
とりあえずOKの返事をして、いつでもどうぞと伝えた。
すると、今日の17時に来ることになった。
桐生さんと目が合った。
「ちょっと理事室に行きましょうか?」
「はい、承知しました」
そして部屋に入るなり、
「やっぱり俺の勘が当たったようです」と桐生さん。
「そうだね。俺もなんか怪しいなあ~と思ったんだよなあ……」
「どうします?」
「どうするってさ、どうにもできないでしょう?」
「いや、対外的なことですよ。向こうがスキャンダルになりませんか?」と桐生さん。
「いや、こっちだってスキャンダルというか、まだデビューもしてないし。
ああ~問題はCMだよ。下手するとお蔵入りになるよ。
それに賠償金だ。でも相手が依頼元だとねえ~。どうなるんだろう?」と俺。
「わ~どうしましょう。困りましたねえ。
先に弁護士に相談しておきましょうか?」と桐生さん。
「うん、そうするしかないかなあ。もうテレビ枠に組み込んでるしねえ……」
「達也抜きのCMって編集で出来ないですかね?」と桐生さん。
「ああ、それねえ。できなくはないと思う。
でもさ、向こうから言い出したなら、なんとかなるんじゃないの?」と俺。
「イヤイヤ、代理店の契約にありましたよね。
騒がすこと自体がダメなんですよ」と桐生さん。
「だってさ、本人は依頼主なんだから、
その辺は何とかなるんじゃないの?」と俺。
駄目だ、堂々巡りだ。
とりあえず17時を待つことにした。
「達也を呼んでおく?」と俺。
「いや、呼んだところで、彼は無力ですよ。
副社長が自ら来るなら、もう合意の上だと思った方がいいと思いますよ」と桐生さん。
「はあ~、だねえ……」
そして17時。
副社長と代理店の柳瀬部長が、神妙な面持ちでやってきた。
俺は桐生さんと目を合わせた。
とりあえず、二人を桐生さんの社長室に案内した。
彼は苦渋と決意が混ざった、そんな切ない表情をしていた。
「わざわざお時間をいただいて申し訳ありません。
多分、お察しかとは思いますが、その通りです」と副社長。
視線を落とし、頭を下げた彼。
「まだ、何回も会ってないですよね?
その辺をもっと詳しくお話いただけますか?
事情が分からないと何もできないです」と俺。
責めるわけではないが、大人が達也を翻弄していないか?
達也はまだ19歳だ。
初めてのCM撮影がやっと終わったばかりなのに……。
俺の腹正しい気持ちに変わりはない。
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