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第32話 達也サイド<透真さんの匂い>

 透真さんの胸に顔を付けると、いい匂いがしてすごく落ち着く。 その厚い胸をそっと撫でてみた。 「透真さん、なんだか筋肉がすごい」 彼の切れ長のきれいな目が少し細くなった。 口元は少しゆるみ、俺を見つめてふっと笑った。 「そうでもないよ。ストレス解消でたまに筋トレをしてるからかな。 でも大してやってない。達也の方こそ、しなやかできれいだよ」 しなやか? そう言われて、先ほどまでの身体中を巡った快感が蘇った。 大人が与えてくれる刺激は凄い。 ……もしかして、それで俺の身体がしなったの? ああ___聞けない……そんなこと。 全部見せちゃったんだし、恥ずかしすぎる。 「ああ……見られちゃった」 「恥ずかしいの?」 俺が頷くと、言葉では言い表せない快感の余韻が静けさの中に広がった。 「達也の身体はすごくきれいだよ。離れるのが嫌になる」 そして、彼は再び俺を強く抱きしめ、耳元で囁く。 「大好きだよ、達也。これからもずっと、そばにいてほしい」 「俺でいいの?」 「達也は運命の人だから。理屈じゃない。 直感で分かって、匂いで確信したんだ」 「俺、それを言われると申し訳ない気持ちになる。 だって、車に乗るまで運命なんて気づかなかったんだもん」 「でも、気づいてくれたから嬉しかったんだ」 彼が起き上がった。 「そろそろ失礼するね。外にSPを待たせてるから」 俺も身体を起こした。 手際よく身なりを整える彼の姿はカッコいい……。 彼は去り際に、大事なことを口にした。 「実はね、夕方、アニメプラスの夏輝理事と桐生社長に話したんだ」 「えっ、本当に?」 俺は驚いて立ち上がった。 「うん。俺は最大限に達也を守ると伝えたし、理事も『最後まで守ります』って言ってくれたんだ」 彼は少しだけ表情を曇らせ、続けた。 「……実は、達也にはまだ話していないことがある。 社内には、いつも会社を狙っている叔父という強敵がいて、 スキャンダルで俺を陥れる隙を狙っているんだ」 俺は背筋が冷たくなるのを感じた。 「ただ、婚約者のことは理事たちにも話した。 彼らは、相手の女性を詳しく調べて折り合いをつけ、 円満解決の方法を探るべきだと助言してくれたんだ。 それとね、本社で父に達也のことを話したんだ。 父は『自分の力でなんとかしろ。それができれば反対はしない』と言ってくれた。 ……だから、達也。俺を待っていてくれる?」 すぐ返事をするべきなのに、 なぜだか身体が固まっていた。 「達也、大丈夫? ごめんね、驚かせて。 ……そうだ、あとで理事や社長にお願いして、 君にはSPを付けさせてもらいたい。 マネジャー一人だけじゃ、どうしても心もとないから。いいかな?」 俺はそっと頷くことしかできなかった。 玄関で再び強く抱きしめられる。 「達也、愛してる。俺を信じて待っていてね」 「はい……分かりました。どうぞ、ご無事で」 最後に彼は頬へキスを落とし、優しい眼差しで見つめてくれた。 そして笑顔で帰っていった。

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